川上未映子 村上春樹 「みみずくは黄昏に飛びたつ」
「騎士団長殺し」がメインのインタビュー。「騎士団長殺し」はもちろん他の作品も基本的にはネタバレなので、主要作品を読んでいないと話につじていけないのは仕方ない。
なんだかんだ難癖をつけながらも、昨今の文壇、いや出版界がこのふたりにおんぶにだっこしていることがよくわかる。作家同士の対談なので一般人とは少し異なる観点もある。川上未映子が村上センセの前では妙にしおらしいのがおかしい。
「騎士団長殺し」がメインのインタビュー。「騎士団長殺し」はもちろん他の作品も基本的にはネタバレなので、主要作品を読んでいないと話につじていけないのは仕方ない。
なんだかんだ難癖をつけながらも、昨今の文壇、いや出版界がこのふたりにおんぶにだっこしていることがよくわかる。作家同士の対談なので一般人とは少し異なる観点もある。川上未映子が村上センセの前では妙にしおらしいのがおかしい。
村上春樹の翻訳本の(たぶん)全部の紹介と翻訳家であり、村上の翻訳のチェックもしている柴田元幸との対談集である。翻訳本そのものにはあまり興味がないが、柴田との対談はなかなか興味深い。翻訳そのものへの興味ではなく方法論が異なる二人のプロが互いをリスペクトしながらの対談だからなのか。
対談で出てきた村上春樹がテーマを絞って複数の作家のものを翻訳したアンソロジー「バースデイ・ストーリー」を今日、図書館で借りてきた。もっとも同じ村上が同じ手法で恋愛をテーマにしたアンソロジー「恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES」は村上の作品以外はいまいちピンとこなかったのであまり期待はしない。
なかなか面白かった。読みやすい。しかも珍しくハッピーエンドっぽいこともあり、読後感が良い。
全くのリアリズムというわけではないが、「多崎つくる」のように重要な謎は残さない。
意識してか無意識かはわからないが、過去の村上作品の一部を彷彿とさせる部分が多い。
プロローグでいきなり顔のない男が出てきて、あれあれと読み始めると、離婚を迫る妻の名前が「ユズ」(かたかなだけど)だったり・・・。井戸のような穴も出てくるし、やっぱり最後はその穴に戻ったり。基本的には村上春樹の小説のつくりである、Seek & Find的である。そして騎士団長は知識がある羊男にも思える。
「騎士団長殺し」という題名だけが発表されたとき、オペラ「ドン・ジョバンニ」に関係したものになるのかと言われたが、その点については村上春樹は裏切らない。
村上春樹の小説は日本人の過去の戦争犯罪、特に中国に関わるものが多いと言われ、今回も南京侵攻が少し出てくるが、メインはナチス。ナチスドイツのオーストリア併合は受験の世界史で覚えていたが、なかみは全く知らなかった。それを「アンシュルス」というのも初めて知った。
2冊セットを即決価格でヤフオクに出したら5分で売れた・・。
題名の「村上春樹のなかの中国」は最初の1/3くらいか。あとは「中国のなかの村上春樹」になってしまいいまいち・・・。それにしても「ノルウェイーの森(以下「森」という)」とか「ダンス・ダンス・ダンス(以下、「ダンス」)など作品名をどうしても省略したいのはなんでだろう。たぶん、コピペが使えない手書き原稿なんだろう。
意見が微妙に異なるふたりなので、それは言い過ぎ、そうは思えないです、などとブレーキをかけているのでそこは読みやすい。信奉者がひとりで書くと、ええ、そうかねえ、と思いながらもそのまま読み続けないといけないので(嫌なら読むなだけど)。
で、読んだばかりなので、「騎士団長殺し」も随所にこの対談集の記述を思い出しながら、妻の名前が初めてのパターンだな、「色彩のない~」からか・・・。え、「免色}?(苗字です)・・、おお、さらに追い打ちをかけるなあ、また、井戸かよ、騎士団長って「踊る小人」かよ、などと楽しく読める。
デューク・エリントンの「スイングがなければ意味はない」をもじった題名に何となく敬遠していたが、読んでみたらなかなか面白かった。題名からジャズの本かと思ったが、ジャズは3つだけ。名前は知っているものの聞いたことがあるのはシダウォルトンのみ(^^)。
面白かったのは、ルービンシュタインとゼルキン。ルービンシュタインといえば真面目にショパンを弾いているおじいさんという先入観だったが、まるで人生をなめたような天才で。練習はしないプレイボーイで、どんな曲でも一瞬で暗譜してしまい、アンコールで弾く曲の出だしを忘れたら、適当なコードだけで観衆を沸かせ、舞台隅にいる師匠に怒られるかとステージを去ると師匠が「おまえはとんでもないやつだが、間違いなく天才だ。俺にはあんな芸当はできない」と・・・。レコードジャケットの印象に騙されていた。ゼルキンはほとんど聞いたことがないので、よくわからないが・・。
正直、テーマとなるアーティストをあまり知らないのだが、それでも面白かった。
「4月のある晴れた朝に100%の女の子に出会うことについて」ほか15の超短編についていろいろ書いてある本。「それは違うだろ」というのもかなりあるし、「100%の女の子」については「そこまで偉そうな発見でもなんでもないが」という感じで、著者の自己満足だけのものもある。それを含めて暇つぶしにはいい。
村上春樹、吉本由美、都築響一の3人の「東京するめクラブ」が「世間から軽蔑されこそすれ、尊敬されることはまずなさそうな土地ばかり」をめぐった記録。選ばれたのは、名古屋、熱海、ハワイ、江ノ島、サハリン、清里。村上春樹の個人的なツテで訪問したサハリンを別にすると、本書の趣旨にぴったり。いきなりの名古屋には思わず笑うが、想像以上の土地柄である。ま、あの喫茶店文化も東京では「コメダ珈琲」がしっかりと広めているが・・・。ふつうの人はまずいけないサハリンにも、ふつうの人はたいてい行っているハワイにも行ったことがないし、名古屋も仕事でバタバタと何回か行っただけで(最近は名古屋出張では日帰りか、その後は大阪へなんて感じで)ここに書いてある名古屋名古屋の経験はないものの、なかなか楽しめる。
2003年前後の本なので、安西水丸さんもまだ元気だ。
いくつかの雑誌にバラバラに発表した紀行文のまとめ。
トランジットのベトナムで現地の人に言われたセリフが表題。インドシナ半島でも忘れかけられているラオスに対するベトナム人の優越感とラオスへの蔑視が込められているが、それでもラオスにはラオスにしかないものがあった、それが旅というもの。
以前に住んでいたボストンやイタリア、ギリシャ。小説では想像で描いたフィンランドなども巡る。ひとつひとつの文章が飛びぬけているというものはない、いつもながらの村上春樹の語り口で、書き終わって「やれやれ」と言っているのが聞こえそうだ。
大江健三郎が好きで村上春樹が嫌いな人の評論であるが、題名はややウソ。本書で主張しているのは「村上春樹の作品に出てくるのは病む女性ばかり」ということ。
純文学は私小説であることと村上春樹嫌いの2つの考えが著者の主張の骨格である。私小説以外は通俗小説らしいので、トルストイもドストエフスキーもダメ、三島も川端もダメらしい。ここまで好き嫌いがはっきりしていると読んでいて逆に楽しい。
それと「もてない男」「友達がいないということ」という作品を持つような、友達もいなくてもてない男なので、モテる男やそういう情景がお嫌いのようだ。年齢的にはぼくとほぼ同じでバブル世代なのだが、WikiPediaを見ると、女性に対して興味があるのに本当にモテなかったようだ。
ここまでひとりの男として魅力がないと読者は優越感に浸れる。「女のいない男たち」を図書館で思わず借りてしまった。ここに出てくる男たちはモテないわけではないが。
題名を「病む男はなぜ村上春樹が嫌いか」にしたほうがいい。
Recent Comments