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大栗博司「強い力と弱い力」

大栗博司「強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く」
 前作「重力とは何か」が面白かったので、続編である本書を読んでみた。
この本も前作と同様、E=MC^2以外に数式は出てこない。
 前作以上に面白い。

 理解できない、イメージできない箇所もあったが、ついにヒッグス粒子発見では思わず興奮してしまい、最後は爽快な読後感・・・。こんな物理の本は初めて。

 その爽快感は現在の量子力学、標準模型を作ってきた40人以上のノーベル賞受賞者の取組からくる。
「重力とは何か」がアインシュタインという一人の天才がほぼ独力で構築した相対論という美しい体系の解説であるのに対して、本書は量子力学が多数の天才がいかに努力を重ねて築きあげてきたか、そしてヒックス粒子の発見に至ったかを解説する。

 「強い力」「弱い力」とはかなりあいまいな印象の用語だが、これはstrong force、weak forceという専門用語で電磁気力より強い、弱いと区別される全くの性質の違う力であり、ジェダイの能力を判別するものではない(と、言ってみたかった・・・)。
 前作でも登場した南部陽一郎博士は本書ではかなりの長期に渡って登場する。南部博士がノーベル賞を受賞したとき、博士の高齢を勘案した温情受賞のような話があったが、そんなことは大きな間違いであり「対称性の自発的破れ」という発想がその後の量子力学をいかに支えていったかが分かる。
 ちなみに博士の発想の最初は超伝導磁石のマイスナー効果だという。超伝導磁石といえば、つい最近リニアモーターカーの途中駅が発表されたばかりだが、リニアモーターカーが浮上する力は磁石のN極どうし、S極どうしが反発する力だと、恥ずかしながら思い込んでた・・・。違うのか、ということを本書を読んで初めて知る。鉄道好きとしては情けない。リニアモーターカーが開発に苦しんだのは「クエンチ」対策だったが、ヨーロッパにある全周27キロの加速器、LHCも(光速の99.999999%まで加速された陽子を、周回させるために大規模な磁力を使う)稼働9日めにクエンチが発生し大事故となり修復に1年以上かかったという。(クエンチとは突然、超伝導状態でなくなる事象。リニアなら地面に墜落する。数センチだけど)
 1秒間に10億回の陽子の衝突を起こしてすべてをデータ処理って、ITの世界知らなくてもスゲエと思う・・。
 ちなみに、LHCを作った研究団体CERNが情報共有のために作ったのがインターネットのWebシステムだって。
 
 ヒッグス粒子の発見が何の役に立つのかは筆者を含め学者も今はわからない。が、19世紀初頭に電磁誘導を発見したファラデーは、財務大臣に「電気は何の役にたつのか」と聞かれ、「わからないが、将来あなたはこれに税金をかけられるでしょう」と言ったという。マルコーニの大西洋無線通信成功の半世紀前の話である。

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