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柘植光彦「村上春樹の秘密 ゼロからわかる作品と人生」

柘植光彦「村上春樹の秘密 ゼロからわかる作品と人生」
 初心者向け解説本というレビューがあったので、期待しないで読んだらなかなか面白かった。
 柘植光彦(つげ てるひこ)は「村上春樹スタディーズ」全5巻の評論本のとりまとめ者であり、このうちいくつかを読んでいたので、この人の名前と作者と作品に関する好意的イメージは知っていた。またその文章のわかりやすさも。「村上春樹スタディーズ」は対象の作品発表当時の評論が多いため、賛否両論、難解な評論や批判することがアイデンティティというような評論も多い中、最後に柘植がきちんとまとめに入る。もちろんかなり好意的ではあるが、文章にべたべたした印象やへつらいはなく、読んでいて気持ち良い。
 で、この本もそんな印象で書かれるが、ちょっと変わっているというか、なぜ今までこういう形式がなかったのだろうという気もするのだが、作品研究よりは作家・村上春樹に焦点をあて、幼少の頃、学生時代、新婚時代、神宮球場のヤクルト開幕戦で先頭打者のヒルトンがヒットを打った瞬間などのクロニクルから入っていく。
 「ゼロからわかる作品と人生」というサブタイトルがついているが、順番でいえば「人生と作品」だろう。もちろん作家評論なので作品解説はあるが、クロニクルに何を書いているかその先の構成が見えてくるようでもある。
 村上春樹の生い立ちや環境への記述が多いのは、2009年のエルサレム賞の「卵と壁」のスピーチで父について語ったことに啓発されたのではという気がした。
薄めの新書ではあるが、長編や中編のみならず、話題の範囲であれば短編にも手をだし、巻末には作品ごとの登場ページが目次になっており、見返すのに便利だ。2010年4月刊行で「1Q84」までカバーしている。
 柘植さんは2011年に逝去しているので、もう彼の評論は読めない。

 自分の本になってしまうと安心して、一冊の本をなかなか読み終えないわたしが一日で読み終えてしまった。こういう本がマーケットプレイスで1円(+送料250円)で入手できるのは嬉しい・・・。

 AMAZONのKindle買って以来、毎日Kindleのセールのページを見ては、Kindleでは購入しないで、中古や図書館ばかり・・・貧乏くさい。おかげで次は何を読もうかなということはなく、つねに2,3冊抱え、読む冊数だけは増えた。質は別として・・・。

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