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「風立ちぬ」

 「風立ちぬ」。堀越二郎+堀辰雄「菜穂子」という不思議な組み合わせがモデルということで見てきた。一夜明けても、頭の中はもやもやしている。今までのジブリ、宮崎映画とは違う。

以下、ネタバレあり。

 予告篇をみただけでそれ以外の下調べはせずに見に行った。土曜とはいえ、21:50開始のレイトショーにもかっかわらず座席は1/4くらい埋まっていただろうか、公開2周目でこの入りはさすがである。ふだんなら10人以下だ。

 旧信越本線の碓井峠だなとわからせる煉瓦積の橋梁や、立場川橋梁の赤いトラスは中央本線富士見駅が近いことがわかる。このあたりの鉄道オタクぶりは牽引する蒸気機関車がけっして9600一種類だけにしないところや間違ってもD51なんか出さないところにも表れている。もちろん客車にも。
 複葉式飛行機は、ナウシカかラピュタを見ているような錯覚に陥る。この空中感覚や鳥瞰的表現はジブリお決まりの表現であり、嫌いではない。

 しかし・・・。なんと冷たいヤツ、堀越二郎。
 モデルグラフィックスの原作漫画は見たことがないし、雑誌そのものも見たことがないが、「紅の豚」も連載していた雑誌の広告を見る限り、かつて実家で販売していた「モデルアート」のような模型雑誌のようだ。
 そうであれば主人公は飛行機に美を求めねばならないし、それが殺戮の武器をあることを全く忘れて機能美だけに集中するのだろう。そして人間や女性に対しても同じような美意識だけで接することを当然としており、それが他者を傷つけることなど想像だにしないアスペルガー的な思考回路を持つはずだ。一高、東大を首席で卒業するような人材にはありうることかもしれないが。

 というふうに考えると、この作品での堀越二郎はまさにそのとおりの人間であり、天才的設計技術者であるが、軽さのためにパイロットを防御する鉄板をはずすことも、当然だったようにも描かれる(実際はそんなことはなかったとは思うが)。ただ、この映画では二郎は、自分の生活や仕事を一切変更しないまま、死期にどんどん向かう菜穂子を上司の離れに一日中放置する。富士見の診療所に見舞いに行ったのかどうかも不明である(きっと行っていない)。このような冷徹な性格に描くことについては、堀越次郎の遺族に了解はもらっているとのことであるが、そこまでして自分(宮崎)を投影する必要があったのかどうか。

 登場人物の喫煙シーンがやたらと多いのは、時代なのか、それともジブリでも宮崎と鈴木敏夫のふたりだけが喫煙者になってしまった反抗なのか・・・。

 キャラクターの中では堀越の上司、黒川がいい。容貌といい、最初の登場の仕方といい、イヤな上司なのかと思ったら、堀越を正当に評価をし、海外経験を積ませ、特高からかくまい、自宅の離れを住居に提供し、菜穂子との即席結婚式の仲人も執り行う。これも三菱重工に実在の黒川氏というモデルがいるそうだ。

 「菜穂子」を読んでいないので(堀越二郎の伝記かゼロ戦の本は昔なんか読んだ)kindleにダウンロードしてみた(\0)。

 宮崎の実質デビュー作「風の谷のナウシカ」は文明の進化と環境汚染という矛盾がテーマだったが、(きっと)最後の本作は宮崎自身の「戦闘機、武器好き」「戦争嫌い」の矛盾のカミングアウトともいわれる。単なる余韻を残すだけの作品ではない。

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