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村上春樹「雨天炎天」

村上春樹「雨天炎天」

 リンク先は2008年刊行の新装版だが、読んだのはギリシャとトルコが2分冊になっている1990年の初版(図書館本)。
 村上春樹・文と松村映三・写真による、ギリシャとトルコ旅行記。
 ギリシャと言ってもアテネやエーゲ海ではなく、女人禁制のギリシャ正教の聖地を巡る4日間の徒歩旅行。
 トルコと言ってもオリエント風味のイスタンブールではなく、黒海沿岸からソ連、イラン、イラク、シリア国境近い辺鄙な地で時にはクルド人ゲリラに取り囲まれるハードな三菱パジェロでの21日間トルコ一周。

 ギリシャ編には訪問した地域を取り「アトス-神様のリアル・ワールド」
 トルコ編には「チャイと兵隊と羊-21日間トルコ一周」と副題が着いている。
 最近の村上春樹の小説は題名だけではよくわからない題名が多いが、このころは副題がまさに内容を指している。
 ギリシャのアトス半島、ギリシャ正教の聖地は基本的に修道院しかなく、宿泊は基本的に修道院で食事は彼らの提供するものだけ。修道院により異教徒である彼らの扱いも異なる。日本では想像しにくいが、比叡山や高野山の暮らしからTVや下界との接触を一切絶った男の修行僧だけの世界。
 ということでかなり厳しい旅行になるのだが、紀行は村上ならではのウィットで楽しく読ませる。行く先々で出させる甘すぎるお菓子に最初は辟易していた彼らが、行程の厳しさからだんだん甘いものを味わい、求めるようになっていくところが面白い。

 トルコ編は期間が長いだけに(クルマではあるが)もっと大変。親日的でめちゃくちゃ親切なトルコ人に好感を覚え、妙に厳しい軍隊や警察、いかにも胡散臭い国境の町、クルド人ゲリラ、爆走するタンクローリー。とりあえずなんかあったら、お礼でもいざこざでもなんでも通用する「マルボロ」。
トルコのさまざまな面を彼らは味わう。
 
 村上たちがたどった軌跡を行ってみたいとは思わないが(村上も二度と行きたくないと書いている)、トルコという国と国民にますます親近感が涌いてくる旅行記。




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