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伊藤元重「ゼミナール 現代経済入門 」

伊藤元重「ゼミナール 現代経済入門 」
経済学者版の池上彰さん(と、ぼくが勝手に思っている)伊藤元重先生の有名なシリーズの最新版である。
AMAZONのレビューを見ると最初が一番いいらしいが、最新版も(きっと)負けず劣らず良い。
 2011年2月、大震災前の発行。

 最初にトレンド的な話題をあげた後で、マクロ経済、金融、市場、企業行動といった理論を分かりやすい例を挙げながら解説し、これらの理論や知識を前提に目線を国民からに落とし、最後に国際経済を語る、という分かりやすい構成。

 2段組425ページという大部の本であるが、経済の知識がない初心者でも読み進めるように噛み砕きつつも、ポイントははずさない。ぼくも30年近く前に経済学部を出たことになっているが、すなわち30年近く何も経済の勉強をしていないということであり、80年代以降の経済学の趨勢なんてもちろん知らない。ゲーム理論の経済学への浸透なんてうわさしか知らなかった・・・。

 スミス、ケインズ、リカルドといった経済史的な話題はもちろん、アジア通貨危機の意味だとか、固定相場制はなぜ維持できないのかとかいう「いい質問」を自ら発して、解説している。

 「現代経済」と銘打っている以上、当然時事的な解説ネタも多い。貿易や為替といった話に加えて、例えば銚子市立病院の閉鎖問題については、実は銚子の隣の旭市という小さな市には銚子市立病院よりももっと大きな病院があり、銚子の病院よりも盛況である点をマスコミはあまり報じていない、そもそも総合病院を市ごとに設置・維持することにムリはないのか、とも論じている。
 医療については、モラルハザードの一例としても記載しており、静かな論調ながらも、自己負担が少ない高齢者の安易な病院通いが医療崩壊の大きな原因とも述べている。予防医療を進めた結果、長寿になり医療費が増大してしまったが、働ける年齢が上がったことにより最終的には生産力の増加につながるかもしれないとまとめている。
  消費税については肯定的である。所得税を上げるのと消費税を上げるのではどちらが実は逆進的かを丁寧に述べている。所得を隠している高所得者でも高価な商品や消費を沢山すれば消費税をきちっと払うことになるので、消費税のほうが公平なのである。

 改定のたびに読まなくても、一冊読んでおけば、消費性向と乗数を間違えることはないだろう。

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