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江上剛「告発の虚塔」

江上剛「告発の虚塔」
 この人、文章が相変わらずうまくならないですな。
 これほど露骨にモデルの個人名がわかる小説を書くのもどうかと思うが、フィクション部分の登場人物が相互に関係ありすぎで、水戸黄門もびっくりの構成。
 パーティ会場に現れたTV局の経済担当の超美人アナは主人公である若き広報部員(江上さんの理想像か?)の元恋人。彼女がスキャンダルを狙う頭取が倒産させたベンチャー企業の社長は、幼少の頃に別に育てられた彼女の兄。主人公が親しい総務部のたたき上げの担当者は実は彼女の叔父。一方、買収を仕掛けられた製紙会社の財務担当専務は主人公の元上司・・
 まあ、作者が書きたかったのは3行統合で出来上がった3人のトップや行内のどろどろ模様なのだろうけど、もう少し構成しようがあっただろう。
 ハッピーエンドなのに、無駄な時間を費やしてしまったことにむなしくなる本である。
 なら、読まなければいいのに、と思うが、少しは別のネタやもう少しきちんとした小説を書いてくれるかなと怖いもの見たさで、つい・・・。

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伊藤元重「ゼミナール 現代経済入門 」

伊藤元重「ゼミナール 現代経済入門 」
経済学者版の池上彰さん(と、ぼくが勝手に思っている)伊藤元重先生の有名なシリーズの最新版である。
AMAZONのレビューを見ると最初が一番いいらしいが、最新版も(きっと)負けず劣らず良い。
 2011年2月、大震災前の発行。

 最初にトレンド的な話題をあげた後で、マクロ経済、金融、市場、企業行動といった理論を分かりやすい例を挙げながら解説し、これらの理論や知識を前提に目線を国民からに落とし、最後に国際経済を語る、という分かりやすい構成。

 2段組425ページという大部の本であるが、経済の知識がない初心者でも読み進めるように噛み砕きつつも、ポイントははずさない。ぼくも30年近く前に経済学部を出たことになっているが、すなわち30年近く何も経済の勉強をしていないということであり、80年代以降の経済学の趨勢なんてもちろん知らない。ゲーム理論の経済学への浸透なんてうわさしか知らなかった・・・。

 スミス、ケインズ、リカルドといった経済史的な話題はもちろん、アジア通貨危機の意味だとか、固定相場制はなぜ維持できないのかとかいう「いい質問」を自ら発して、解説している。

 「現代経済」と銘打っている以上、当然時事的な解説ネタも多い。貿易や為替といった話に加えて、例えば銚子市立病院の閉鎖問題については、実は銚子の隣の旭市という小さな市には銚子市立病院よりももっと大きな病院があり、銚子の病院よりも盛況である点をマスコミはあまり報じていない、そもそも総合病院を市ごとに設置・維持することにムリはないのか、とも論じている。
 医療については、モラルハザードの一例としても記載しており、静かな論調ながらも、自己負担が少ない高齢者の安易な病院通いが医療崩壊の大きな原因とも述べている。予防医療を進めた結果、長寿になり医療費が増大してしまったが、働ける年齢が上がったことにより最終的には生産力の増加につながるかもしれないとまとめている。
  消費税については肯定的である。所得税を上げるのと消費税を上げるのではどちらが実は逆進的かを丁寧に述べている。所得を隠している高所得者でも高価な商品や消費を沢山すれば消費税をきちっと払うことになるので、消費税のほうが公平なのである。

 改定のたびに読まなくても、一冊読んでおけば、消費性向と乗数を間違えることはないだろう。

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太田啓之「いま、知らないと絶対損する年金50問50答」

太田啓之「いま、知らないと絶対損する年金50問50答 (文春新書) 」
 図書館の予約件数も多く、AMAZONの中古価格もほとんど下がっていない人気書であるが、たしかに良書である。震災直後にまとめがかかれており、その点でもタイムリーである。大震災以前に書かれた金融・経済関連の書籍については、では震災復興資金、税制をめぐってどういう影響があるのか、という疑問点が残ってしまうからである。
 著者は朝日新聞の年金スペシャリストであるが、なぜ文春からの出版なのかがひっかかる以外は、明快。

 震災や原発事故報道と同様にマスコミが、如何に中身を理解しないまま扇動的な報道をしているのかが、マスコミに所属する個人の手で解明されている。

 年金に関する扇動的な報道は多数あるが、著者は本書のなかでいくつかを整理、否定している。もちろん民主党の抜本改革も。

 「年金崩壊」は「保険料不払い」から来る話だが、そもそも6割とかいう納付率は、年金全体の6,900万人のうちの2,000万人にあたる国民年金の部分でありサラリーマンや専業主婦の厚生年金や3号には何の影響もないこと、国民年金未納になっても、将来年金をもらえないのは未納の人の話。またそもそも6割といっているのが「6割の人が支払っていない」という記事は無知の証明であり「本来支払うべき金額の6割」が正しく最終的な支払率は31%であり、この区別ができない記事は信用してはいけない。
 それとこれは著者の主張であるが経済界が主張する「全額税金方式」(国民年金を全部政府負担にする)は「賦課方式」(現役世代の保険料で年金を賄う現在の方式)よりも莫大な税金(消費税になるだろう)がかかるが、それを推進するのは基礎年金部分の企業負担を嫌う財界の意向が強いことが知られていない。このあたりは会社の経理をちょっとやっていれば知っているが、給与のざっと8%が厚生年金でもっていかれる場合、同じ額だけ会社も払っている(あわせて約16%)。この部分が会社としては節約される。

 その他、年金記録問題や年金基金流用によるXXトピアの破綻など不正問題が多数あったものの、金額的には132兆円の積み立てを持つ年金資産からすれば、かゆいかもしれないが、痛くはない、という規模。だから国民年金を支払っていない人も免除措置があるかを確認して、とりあえず今の制度を一度確認したほうがいいですよ、という本である。
 国民年金や厚生年金に加入・支払をしながら個人年金に追加で加入するのは本人の自由だが、もし前者に入らずに「自分のことは自分でやる」という意気込みで個人年金だけに入るのは、無知無謀。

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嵐山光三郎「新廃線紀行」

嵐山光三郎「新廃線紀行」
 椎名誠が敬愛する嵐山さんの本を始めて読んだ。
 なるほど、エッセイストであり紀行家(というよりも旅ライター)として椎名さんが、嵐山さんを敬愛する理由がなんとなくわかる文章であった。
 AMAZONのレビューでは鉄道作家である宮脇俊三との比較でけなされていたが、鉄道文学というジャンルを切り開いた宮脇さんと同じ土俵で評価されたら、それはちょっと酷であろう。

 本書では廃線跡めぐりに主に車が使用されるが、折りたたみ自転車の登場比率もかなり高い。途切れ途切れとなっている廃線跡を輪行しながら行くときもあるし、サイクリングロードになった廃線跡を自転車で巡ることもある。このあたりですでに宮脇さんとはスタンスが違うのではないか。といいながら、宮脇さんの廃線ものはまだ読んだことがない。

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浅川サイクリングロード 2011/8/7

前回、途中までだった浅川サイクリングロードに午後から出かけた。
陽射しがある間はさすがに暑かったが、日差しがなくなると気持ちよい道が続く。
多摩御陵の南にある立派な橋を見て帰宅

詳細&写真

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近藤史恵「サヴァイヴ」

近藤史恵「サヴァイヴ」
 「サクリファイス」「エデン」に続くシリーズだが、短篇集というか連作になっている。登場人物のメインどころである白石誓は変わらないが、彼とは直接からまない日本国内のチームが出てきて、中盤はこのチームの中の話になる。

 連作なので仕方ない面があるが、ひとつのレースの描画が少し短い。国内ではツールド北海道や沖縄にジャパンカップそして海外では世界選手権が描かれているが、レースの中をもう少し書いてほしかった。
 ただ、話としてはいずれもなかなか面白いが、アマゾンのレビューにもあるように、登場人物が苦しみすぎではないかと思う。
 体力を使うスポーツであり、彼らの多くは30歳以下であるが、この年齢でこんなに悩んだり、引退後のことを考えなければいけないのか・・・。特に日本ではマイナースポーツなので、実際にそうなのかもしれないが、能力ある若者がこれを読んで、ロードレーサーになろうと思うかなあ、という感じはする。

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