« レーパンではやぶさ見学  2011/7/10 | Main | 伊藤礼「大東京ぐるぐる自転車」 »

原武史「「鉄学」概論―車窓から眺める日本近現代史」

原武史「「鉄学」概論―車窓から眺める日本近現代史」

 原武史流の鉄道学の概論であり、彼が各所で展開したり出版してきた鉄道にかかわる事項が簡潔にまとめられている。すなわち、鉄道紀行文学の3人(内田百間(ケンは門構に月)、阿川弘之、宮脇順三)の紹介、永井荷風や高見順のはなし。そして得意の天皇と鉄道、阪急と東急そして西武の比較。さらには団地とそれをとりまくコミューンの発生。都電と地下鉄との違いや新宿を巡る大きな事件など。

 実はこの本、宮部みゆきの解説で知ったが、NHKのTV「知るを楽しむ」のテキストを改変したものだとか。これが映像や画像とともに語られるとなかなか面白い番組になったことに違いない。

 さて、上記のテーマのうち大方は著者の著作などで知っている事項だったが、まだ読んでいなかったものとして特に西武線沿線の団地住民によるコミューンの話がある。共産党が支持基盤を広げていた頃の話である。それまでの家庭と違い核家族が中心の団地は夫が仕事に出て子供が学校に行くと主婦は暇になる。当時の団地はそれなりの生活水準がないと入れなかったので主婦は比較的高学歴で政治的な素養もある。このあたりが団地に社会党や共産党が広まる余地があったらしい。山崎団地などの団地住民がかなりの割合になった町田市では共産党の得票率が全国平均の3倍とかになったらしい。
 わたしの住む多摩市も市議会での共産党の議席は意外と多い。彼らの基本的な思想にはとても共感できないが、地域生活の中では彼らは他の政党よりも住民の意見によく耳を向け参加していることも事実であり、ここ多摩ニュータウンも西武のひばりが丘団地に近い生い立ちがあるため似たような傾向があるのだろう。
 ただし、著者がいうには、地形も大事な要素で、西武線や東武線など平地にある団地のほうが住民の間で一体感が醸成されやすく、小田急や京王のように丘陵地帯の団地の場合は、丘の上と下では一体感が生まれないらしい。

 というわけでなかなか面白い「鉄学」であった。

|

« レーパンではやぶさ見学  2011/7/10 | Main | 伊藤礼「大東京ぐるぐる自転車」 »

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/2457/52189673

Listed below are links to weblogs that reference 原武史「「鉄学」概論―車窓から眺める日本近現代史」:

« レーパンではやぶさ見学  2011/7/10 | Main | 伊藤礼「大東京ぐるぐる自転車」 »