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浅田次郎「マンチュリアン・リポート」

浅田次郎「マンチュリアン・リポート」
 「蒼穹の昴」「珍妃の井戸」「中原の虹」に続く完結編。
 張作霖爆殺事件の真相を追う、ということであるが、最初にこのテーマと知ったとき「え、関東軍じゃあないって話なの?」と意外に思った。しかし関東軍であることは間違いなく、その詳細を調べよという話である。でも、それだけであれば、いくら張作霖つながりとはいえ、前の3作とは少しテーマが異なるのではないか?という気がした。所詮、起こってしまった謀略についていくら真相を解明しても、この3作の続編、完結編にはならないのでは、という意味である。
 しかし、さすがというか浅田次郎はちゃんと続編になるように仕上げている。

 それとこれは重要なことであるが、これはフィクションですよ、ということを明確に示している。張作霖が運命の列車を牽引した列車と会話することで御伽噺であることを明示しているし、最後に龍玉を出すことで、フィクションであることと3部作の最後であることを示している。
 なぜ、それが重要かというと、ここが司馬遼太郎との違いだと思う。

 司馬遼太郎は綿密な調査のうえで独自の司馬史観といわれるものを構築し、それを小説にしたが、あまりによくできたリアリスム小説だったので、読者はそれが真実だと思ってしまった。「龍馬がゆく」然り、「坂の上の雲」然りである。そういうぼく自身、司馬遼太郎には精神汚染されているところは十分あるが、共同幻想にまどわされないようにはしているつもり。

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