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三田完「櫻川イワンの恋」

三田完「櫻川イワンの恋」
 新潮社の広告誌「波」に「モーニングサービス」という連載小説がある。浅草の喫茶店を舞台に界隈の人間模様が描かれる、どことなくほっとできる小説である。その作者が本書の作者三田完であり、冒頭にオール讀物新人賞受賞作の表題作「櫻川イワンの恋」。ほか4編の短篇集である。
 表題作も舞台は浅草、描かれるのは昭和初期のロシア人の幇間。これはさすがになかなかいい。
 しかし、続く小編を読み進むにつれ、まあそこそこの話ではあるが、表題作ほどではないなあと感じた。所詮NHKあがりの素人作家の域を出ないと・・・。
 「ひょうたん池」は美空ひばりの育ての親といわれる川田晴久を巡る話、ひょうたん池は浅草寺に以前にあった池である。「親父橋」は落語家3代、「愛宕女坂」はラジオ放送開始当初の女性アナウンサーの話。最後の「あじさゐ小路」は、満州での東海林太郎と甘粕正彦(あの大杉事件の)の話である。

 モデルのある小説というのは、とても危険である。読者に固定観念を植え付ける。国民的作家となればなおさらである。司馬遼太郎が描いた坂本龍馬や秋山兄弟などが最たるものだろう。歴史小説は当然ながら全部がそうなるが、短篇でモデルを持ち出す意図は何だろう。有名人だから読者にはなんらかの先入観や偏見、思い込みがあるが、それをちょっと覆すつもりの軽いジャブなのか。まあ、そういうことを考えながら読むと面白かった。

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