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杏里「Bi・Ki・Ni」「Timely!!」「Coool」

杏里「Bi・Ki・Ni」杏里「Timely!!」杏里「Coool」

 デビュー当時、近隣の高校の生徒だったことや、「オリビアを聴きながら」が注目されていた尾崎亜美の曲だったので、杏里はデビュー時には関心があったものの、アルバムを聴いたのは「BOOGIE WOOGIE MAINLAND」(1988年)あたりから「Angel Whisper」(1996年)までだった。もちろん「CAT’S EYE」や「悲しみがとまらない」のヒットは知っているが、この2曲のためにアルバムを買うという気にはならなかった。

 角松敏生が楽曲提供していることを知ったのは角松の「The gentle sex」で「I CAN’T EVER CHANGE YOUR LOVE FOR ME」取り上げたからだが、手持ちのアルバムには収録されていなくても、調べてまで購入しようとは思わなかった。
 ところが最近調べてみたら、これが角松三部作といわれるアルバムの1枚と知った。
 三部作が「Bi・Ki・Ni」(1983年)「Timely!!」(1983年)「Coool」(1984年)の3枚。「Timely!」は「Cat's Eye」に「悲しみがとまらない」も収録され、オリコン1位のアルバム。
 この3枚のアルバムの評価はいずれも飛びぬけているので最近3枚とも揃えてみた。ただし音質評価が高い紙ジャケ仕様はCooolだけ。

 杏里のアルバムは全体的に明快に主張するというか、ちゃんと聞かないとダメなものが多いが、なるほどこれはいかにも角松アレンジで、まじめに聞くのもいいし、BGMとして流しても邪魔にならず、心地よい。

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浅田次郎「中原の虹」

浅田次郎「中原の虹」
 久しぶりにスケールの大きな歴史小説を読んだ。
 たまたま見たNHKのドラマ「蒼穹の昴」が面白かったので、浅田次郎の原作を図書館で探したら、予約多数だったので、同じ作者の別作品を探した。「中原の虹」は張作霖の話のようだ。張作霖といえば戦時中は「満州某重大事件」、学生の頃の日本史では「張作霖爆殺事件」という関東軍の陰謀で名前だけは知っている当時の中国の軍閥で、息子が張学良、この人がいわゆる双十二事件(これも日本史では「西安事件」と習った。双十二というのは12月12日に起こったから)を起こす。受験の日本史の知識なんぞその程度であり、張作霖がどのような人物であったかは全く知らない。
 で、読んでみた。
 単行本4冊の長編であるが、面白かった。

 読みやすかったのは、「蒼穹の昴」に登場する人物と登場人物がダブっており、架空の人物も同じであること。途中で人間関係がわからなくなるとNHKの「蒼穹の昴」のサイトを開いて関係を調べた。
 張作霖は東北、すなわち満州の軍閥であり、自警団から発達した馬賊の長である。彼を取り巻く人々と、一方で「蒼穹の昴」の中心である西大后を取り巻く人たちの物語。一方で、女真族である愛新覚羅ヌルハチ以下が満州から中原(満州から見て万里の長城の先の中国本土)を目指す情景が並行して描かれている。

 張作霖の天才・異才に惹き込まれる。袁世凱もたじたじで、日本の関東軍は彼を列車ごと爆破してしまうしか手がなかったのかな、と思う。もっともこの作品はそこまでは描かれていない。

 全体として非常に面白い話なのだが、張作霖の周囲や西大后の周囲の準主人公格の人物がモデルはあるとはいえ架空の人物で固められており(「蒼穹の昴」も同じ)、その点が素直に楽しむのか、残念だなと思うのかは難しいところ。

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池内紀「なじみの店」

池内紀「なじみの店」「山の仲間たち」

 池内 紀(おさむ)の名を初めて見たのが氏の編集による「山の仲間たち」だったこともあり、なんとなく山の専門家のイメージがあったが、本職はドイツ文学でカフカやゲーテが専門。しかし、その手の本には縁遠いので、いかにもくつろげそうな題名の「なじみの店」を読む。
 冒頭の「庭の一畳間」の出だしでは、その正体がつかめずにSF小説かと、ちょっと面食らったが、エッセイ集なんだなと理解して落ち着いた。
 1940年生まれなので出版時に61歳で、11月に古希を迎える。

 60歳のおじいさんのエッセイだからそれなりに落ち着いたことが多いはずだが、そうでもないところが面白い。ドイツ文学という堅いことが本業だと、エッセイなり心情吐露では思いっきり弱音なり俗世間的な欲を言ってみるのかもしれない。そういう人間臭い部分が楽しいエッセイ集である。

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椎名誠「チベットのラッパ犬 」

椎名誠「チベットのラッパ犬 」
 椎名誠の本はほとんど読んでいるが、除くSF、である。
 SFになじみがないせいか、はたまた椎名版のSFのスタイルが合わないのか「水域」はイマイチだったし、日本SF大賞受賞作の「アド・バード」は意識的に避けている。
 今回は間違って読んでしまった。題名にチベットとついていたので、あちらの旅行記かと思った。
 
 ストーリー自体はそれなりに面白いのだが、椎名が使うSF的な用語、すなわち現代社会には存在しない未来器具や用語にどうもなじめなかった。

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池澤夏樹「スティル・ライフ」

池澤夏樹「スティル・ライフ」

「きみのためのバラ」が、面白かったのでデビュー作・芥川賞受賞作のこの作品も読んでみた。
 ちまたでは「理系の村上春樹」というらしいが、村上春樹ほどとっつきにくくはない。
 「スティル・ライフ」はきわめてゆったりと話が流れる。3月になると訪れる「雨崎」は架空の地名かと思ったら(電車の路線の描写がいかにも京浜急行だったので)地図で調べたらありました、三浦半島に・・・。火力発電所は房総ではなく横須賀の火力発電所ですね。
 さて、物語のクライマックスはたぶん友人・佐々井から頼まれた仕事のことなんだろうが、それについては大きな描写はなくというか、控えめな印象であり、やはり雨崎の雪の描写と山や宇宙の写真のスライドショーの光景が心に残る。時間がゆっくり流れる静かな筆致は「きみのためのバラ」と同様であるが、それよりもやや描写が粗いところがいかにもデビュー作っぽい。
 同じ本に収録している「ヤー・チャイカ」もなかなか面白い。こちらのほうは恐竜の位置づけがよくわからなかったが、鷹津という娘と二人暮らしの男は「きみのためのバラ」収録の「ヘルシンキ」にも登場する。

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池澤夏樹「きみのためのバラ」

池澤夏樹「きみのためのバラ」

 池澤夏樹。なんという響きの良い名前だろう。いかにも詩人っぽいペンネームだと思った。しかし、これ本名なんですね。正式には本名は福永らしいが(父が福永武彦)、池澤は母の姓。ま、いずれにしても若々しい名前であるが1945年7月終戦直前のお生まれ。

 この人の名前はずいぶん昔からいろいろなところで見ているし、その著作も書店で手に取って見たことは何回かあるが、その人となりを知ったのは星野道夫との対談などであろうか。
 Wikipediaには親交のある人として星野道夫があがっているが実際には3回合っただけだそうだ(NHK「あの人に会いたいー星野道夫」)。

 さて、物語は8つの短編集。世界各地でのささやかな出会いと別れを綴ったもの。国や土地やそこに住む人の感性がほどよく描かれた佳作が並んでいる。そのうちひとつだけが「白頭鷲」が生活するカナダ北部の太平洋沿岸の話で、星野道夫っぽいかなと思った。
 いずれの短篇もなかなか良い出来だけど、短篇にありがちな、この続きを知りたいという気持ちにならせる作品が少し多すぎるように思った。

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椎名誠「五つの旅の物語」

ONCE UPON A TIME
 椎名誠自らが、こういう写真集を出したかったという写真集。
「こういう」というのは写真についての解説や能書きがなく、写真だけの写真集である。
 ただ、ぼくの場合、田淵行男でも星野道夫でもやっぱり、何か書いてあったほうがすっと入るので、この写真集はちょっとイマイチだった。もちろんいくつかは写真だけで感じるものもあるが、写真だけでいいなあ、と思うのは山の写真くらいなもので・・・。

いいかげんな青い空
 ということで、「ONCE UPON A TIME」と同じ写真文集であるこちらを手にとった。「アサヒカメラ」の「シーナの写真日記」の単行本である。これは良い。
 この本は上記の写真のネタ本でもあるので、写真集だけを見て思っていたことが、この本を見ると実は違ったという発見がいくつかあった・・・。

五つの旅の物語
 椎名誠の写真文集の集大成。
 いろいろなところで話は書いているマゼラン海峡、チベット、北極圏、タクラマカン砂漠などの5つの大きな旅の記録である。
 このヒト、昔から旅・旅の連続で、ホントにタフな人だなあと思っていたが、あとがきを見ると写真集にできる旅がまだまだあるようだ。
 1944年生まれ66歳、孫もいるおじいちゃんなのに。

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探査機はやぶさ7年の全軌跡

探査機はやぶさ7年の全軌跡―世界初の快挙を成し遂げた研究者たちのドラマ
 Newtonの別冊だけのことはあり、関係者への取材を含め、内容が精緻で分かりやすい。
 各種の図版もとてもきれい。

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