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村上龍「半島を出よ」

村上龍「半島を出よ」

 2005年に刊行された、2011年の日本を舞台とする村上龍の小説。
 ぞっとする面白さ。

 執筆当時、近未来としていた2011年は財政破綻、国債暴落と外交失敗による日米関係の悪化、さらなる景気後退、失業率上昇という負のスパイラルが慢性化している。現時点では来年2011年がこの小説にかかれたような状態にはならないだろうが、現政権の無為無策のままだと2015年にはこうなってしまうのではないか、と危惧される。そのあたりの描き方がとても「ぞっとする」。そして上陸された反乱軍への対応のいかにも場当たりかつ保身的な対応にやっぱり「ぞっとする」。

 表題の「半島」とはもちろん朝鮮半島のことであり、「出よ」とは共和国軍の一部が反乱軍の名目で半島を出て福岡に上陸するというもの。
 わずかな兵力で福岡ドームの3万人を人質に取られた政府は、「2時間だけレーダー警戒を解け」の要求に屈し、低空飛行で侵入する500名の部隊を福岡に上陸させてしまい、日本人と変わらぬ容姿を持つコマンドが東京に来るという恐怖心から福岡を封鎖し、切り離す。
 作品の冒頭では不幸な過去と独自の趣味を持つ20名ほどの少年たちが描かれ、彼らがこの物語で核心となる動きをすることは予想できるが、500名の武装兵力にいかに立ち向かうかは最後まで明かされない。

 封鎖された福岡の人々の日本政府への反感、占領軍である反乱軍への擦り寄り、親近感の発生。反乱軍の名目のため悠然と構える北朝鮮本国、米軍との境界を38度線ではなく福岡に南下できるメリットを享受しようとする中国、韓国。純然たる国内問題として派兵を行わない米軍、そして福岡を人質に取られ何もできない日本政府。
 そういう四面楚歌の中で異常な過去と趣味を持つ彼らが登場してくる。

 あとがきで「北朝鮮兵士の心を書きたいと思ったが、まだ書けていない」という作者であるが、巻末に堂々と掲げられた400冊あまりの参考図書のうち半数以上が半島にかかわるもの。どの程度「参考」にしたかは不明ながら、上下2冊の長編を感じさせない。

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