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村上春樹「やがて哀しき外国語」

村上春樹「やがて哀しき外国語」 1994年刊行のこの海外でのエッセイも、先の海外エッセイ「遠い太鼓」と同様に、海外ものは興味がない、外国語に囲まれて悲哀を感じたなんて村上春樹の暗めの小説のように書かれてもなあ、という思いで刊行当時は読まなかった。
 が、「遠い太鼓」が意外に面白かったので、こちらも読んでみた。

 アメリカ、プリンストンでの生活が主である。「遠い太鼓」ではギリシャ、イタリアの数箇所を短い期間で移動していったが、今回はプリンストン大学での講師ということもあり、いちおう腰を落ち着けてので生活である。
 どちらかといえば、国内で軽めに書かれるエッセイと同様の語り口で、内容もかなり面白い。

 「遠い太鼓」のときは村上春樹の代表作をいくつか読んでからでないとわかりにくいのではと感じたが、こちらは何も読んでいなくても読めるし、共感できる部分も多いだろう。

 アメリカはパパ・ブッシュからヒラリー・クリントンへ、湾岸戦争、日本車叩きと日本の景気後退開始時期でもある。「遠い太鼓」ではギリシャとイタリアの国民性の違いが面白く描かれていたが、こちらでは東部と西部の違い、プリンストンとバークレーの違い、タクシー運転手とのジャズ談義、中古レコード、それと官庁や大企業から派遣留学しているエリートにあきれる話など、なかなか面白い話が多い。

 日本車叩きでジャーナリストがアメリカ車を補助金で原価以下で売れば、日本の家の車寄せにはアメリカ車が2台ならびホンダはつぶれると書いているところがおかしい。日本の家には車寄せ(正確には敷地の外の門から玄関までの車用の道路ね)なんてない現実を知らない。
 
まあ、最近のトヨタ車リコール問題とはまったく次元の違う話であるが。

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