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村上春樹「遠い太鼓」

遠い太鼓
 「遠い太鼓」が刊行された1990年ごろは彼の作品をリアルタイムで読んでいたが、まだ彼のエッセイをほとんど読んでいなかったことや「ギリシャ、イタリア旅行記」という先入観があり手に取ることはなかった。どこどこの町は綺麗でワインがおいしいとかいう話に興味がなかったからだ。
 最近、彼についての論評を読むと、いくつかの心情表現がこの本から引用されていること、この本の書かれた滞在の間に「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」を書いたことなどに触発されて読んでみた。

 少し打ちひしがれた感じでスタートするエッセイは山あり波あり、さまざまな小さな出来事やいろいろな話が縦横に散りばめられ非常に面白かった。ギリシャとイタリアの国民性の違い、異邦人として異国で暮らすこと、日本を離れてわかる日本の安全、信頼感、マスコミ報道(この時期は日本はバブルの最盛)のむなしさなど・・・。
 この本を発売当時に読んでいたとしても、たぶんあまり面白くなかったのではないかと思える。
村上春樹の考え方やその作品を、ある程度は知ってか読まないと堅めの部分は理解しにくいし面白くないだろう。
 と、書くと堅いエッセイのように見えるが、かなり砕けた部分や素直な心情、妻との立場の弱いやりとりなど面白おかしい部分もある。中でも可笑しかったのはアルプス山中で初めて購入したランチア・デルタが故障してしまい「イタリア車なんて買うからだ、なんでドイツ車にしなかったの」と責められるあたり。イタリア人も「日本車にしておきなさい」という信頼性のなさ。
 イタリア、特にローマについては厳しい。とにかく窃盗が多い(村上夫妻も帰国の前日にバッグを奪われパスポート、クレジットカード、航空券を奪われている)。損害保険でもイタリアでの被災を除く場合もかなりあるらしい。わずかな時間、駐車しているとカーステレオが白昼堂々なくなるので(ガラスを叩き割って盗む)、彼らはカーステレオを持って車から降りる。日本でもカーナビの被害があるが、白昼堂々とはやらないし、やったら通報される。しかしイタリア人は見て見ぬふりをする。

 それとお役所、中でも郵便制度のずさんさ。彼は原稿を日本に送る目的もあって英国に行っている。なにしろ郵便が届かない、なくなる。日本でも最近は配りきれなくて捨ててしまったなどという事件がたまに報道されているが、ローマでは日常茶飯事らしい。なにせ2階以上だと届けにこない、不在通知を入れるだけ、それすらないこともある。不在通知を手にして郵便局に行っても「ない。何かの間違いだ」といわれ探してくれない。

 海外旅行も、ましてや海外生活にも興味がないぼくでもなかなか楽しんで読めた。

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Tracked on 2010.01.27 at 11:50

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