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岩宮 恵子「思春期をめぐる冒険―心理療法と村上春樹の世界」

岩宮 恵子「思春期をめぐる冒険―心理療法と村上春樹の世界」

 非常に興味深く読めた。
「ノルウェイの森」の有名な台詞に「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」というのがある。直子やキスギなど周囲が死んでいくワタナベにしたら、まあそういうことなんだろうな、と、わかったような気になっていたが、どうやらその本当の意味がこの本を読んで明快になった。

 著者は臨床心理士でカウンセリングを行っており、著作も多い。この本は一般読者向けというよりもむしろそのような方面の人向けのようでもある。
 村上春樹の小説には、よく死の世界が出てくるが、死あるいは邪悪な世界、精神の世界を「あちらの世界」、現実を「こちらの世界」と呼び、カウンセリングを成功、すなわち平常な状態に復帰させるための手法として村上春樹の小説の登場人物が行うような手法、思考を行う試みを、いくつかの症例に沿って説明している。
 突然、不登校になりひきこもりになった女子中学生は引きこもる直前まで援助交際をしていたことが発覚する症例とその治療(母親へのカウンセリング)が全編を通して補助的に語られるが、村上春樹の世界でとてもよく説明できる事実に驚嘆した。

 刊行は2004年で主な題材は「羊をめぐる冒険」「ノルウェイの森」「海辺のカフカ」「ねじまき鳥クロニクル」「スプートニクの恋人」であるが、読んでいなくても必要な部分の解説、あらすじが出るので問題なく読める。

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