沢野ひとし「山の時間」
イラストレータの著者が雑誌「山の本」に連載したもののまとめ。著者の心に残る山の思い出を綴ったもので、単なる山紀行ではなく、著者の思いが強い。
椎名誠の古くからの友人である著者の本のテーマは、山か女性(完全に私小説)しかなく(交友関係は椎名誠が書いているので)、山の本でも女性を引きずっていることが多いが、この本は「山の本」に連載したものだけに、女性絡みは少なく、むしろ自分を山に導いてくれた兄やいつの間にか自分を超えてしまったもと不良の息子など家族についての思いが多い。
とはいえ、じめじめしたものではないし、著者自身のスケッチもシーナ本にあるような意味不明なイラストではなく、相応にまともなスケッチでリラックスして読める本である。
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