« 森博嗣「笑わない数学者」 | Main | シルク・ドゥ・ソレイユ »

尾崎一雄「単線の駅」

単線の駅
 「単線の駅」と言っても鉄道マニアの本ではありません・・・。
 尾崎一雄「単線の駅」が、講談社文芸文庫に収録されたことを同社の広告誌「本」で知ったので読んでみた。もっとも手にしたのは新たに収録された文芸文庫ではなく、図書館にあった1976年刊行の単行本。
 尾崎一雄で「単線の駅」とくればそれは氏が育ち、また戦後からの生涯を過ごした御殿場線の下曽我駅を指す。題名から下曽我での身の回りのエッセイのように思えたが、主に昭和50年前後に氏が各所で執筆したエッセイや書評、対談などをまとめたものであった。

 尾崎を読むきっかけとなったのは志賀直哉の短編を読んだことで、そういえば志賀直哉に師事して芥川賞を取った尾崎一雄とかいう作家がいたなあ、と志賀直哉「城の崎にて」は虫の描写が印象に残ったぼくは「虫のいろいろ」を読んだ。志賀直哉ほど厳しくはないけれども、ピリッとした文章で、当時の短編好みのぼくの趣味に合ったのだろう。その頃の新刊「苺酒」が今ぼくが保有している本で最も古いもののひとつである。あるツテを頼ってサインをいただいた翌年に氏が逝去した。

 さて、そんな短編作家の印象しかなかった尾崎一雄であるが、この「単線の駅」では、広い範囲にわたってのエッセイを残している。特に文明批判、西洋的キリスト教的志向批判的な文章については、このようにひと括りにしては申し訳ないほどの説得力というか、あ、ぼくと同じだ、という思いがし、さらには昨今のアメリカ発金融危機などを見ても非常に、東洋あるいは日本と欧米との発想の違いなどをきわめて正確に指摘しており、畏れ入った。
 一般的な知名度と違ってやはり文壇のかなりの大御所であったことが、その他の有名作家への接し方や呼び方などからわかり、なんとも愉快な面もある。
 また、もう少し読み直してみようかと思う。

|

« 森博嗣「笑わない数学者」 | Main | シルク・ドゥ・ソレイユ »

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/2457/43059832

Listed below are links to weblogs that reference 尾崎一雄「単線の駅」:

« 森博嗣「笑わない数学者」 | Main | シルク・ドゥ・ソレイユ »