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円朝芝居噺 夫婦幽霊

円朝芝居噺 夫婦幽霊
 古典落語を語るのに円朝ははずせないのだが、実は今まで読んだことはなくて、明治に円朝という大人物が居て、円朝全集という本が出ていることくらいしか知らなかった。
 恥ずかしながら「芝浜」「文七元結」「鰍沢」あたりの何度も聞いた噺の作者が円朝だったのを知ったのもごく最近のこと・・・。
 たまたま雑誌「東京人」2007年9月号で円朝特集をやっていたので読んでみた。どうも単に落語の祖というだけではない。漱石や鴎外を寄席に引き寄せ、言文一致運動に悩む二葉亭四迷を開眼させ、井上馨、黒田清隆、江藤新平など時の権力者との交流など、円朝が生きた江戸末期から明治の時代や文芸の状態、もっとわかりやすくいえば、民衆の娯楽の選択肢がどうだったのかという感覚がないと円朝の位置づけがわからない。
 雑誌を読むと実はこの頃の落語は今の落とし噺(面白い話)よりも怪談・幽霊ものが主流だったようで、これを1回の公演が15日続き、毎日いいところで終わる連載もののようになっていたという。だから最近の落語のように1回30分前後の比較的短いものではなく、かなり長いものが多く、そのストーリーも複雑。要するに動画のない映画のようなものだったようだ。
 円朝の時代にはまだ録音の技術がなかったので、速記をしてそれをもと翌日の新聞に前日の内容を連載していたという。「全集」はこれを集めたもの。

 とうわけで「東京人」で歌丸と対談した辻原登の「円朝芝居噺 夫婦幽霊」を読んでみた。
 この本は幻の円朝の速記本が見つかったという設定でその内容を語るフィクションである。したがってこの本に出てくる内容と本当の円朝の速記本が同レベルなのかどうかは(「円朝全集」を読んでいないので)わからない。
 が、面白い。速記本の発見、速記本から起こした円朝の口演(ところどころ紛失箇所があって抜けている・・・)そして廃嫡した円朝の長男の行方という3段構え、メインの円朝の口演はもちろん作者の創作であるが、ストーリーも御金蔵破り、安政大地震と時代背景がわかりやすく、幽霊と題名にはあるが、。まったく怖くないサスペンスっぽい出来。

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