中島義道「人間嫌い」のルール
要旨や最後の「人間嫌いのルール」そのものはAMAZONの商品説明をごらんいただくとして、けっこうまじめで面白い。特に夏目漱石の後期三部作に登場する「高等遊民」や徒然草の台詞を引用するあたりは、学生時代に同じように考えていたので、だよねえ、と思った。
また「走れメロス」や映画「哀愁」を題材にした「信頼と誠実さ」「信頼による支配」などの章はなかなか考えさせる話題である。
著者はまずさまざまな人間嫌いの種類を分類・分析し、自分がどこに居るのかを表明し、次に人間嫌いとして生きるために「共感ゲームから降りる」「ひとりでできる仕事を見つける」「他人に何も期待しない」という段階をあげ、最後に「家族を遠ざける」に至り、人間嫌いとして生きるための10のルールを掲げる。
ただし、これを実現するのはかなり難しい。
共感ゲームを降りるとは会社や地域社会というコミュニティーを無視することであり、そのためには変人と思われても自活できる「ひとりでできる仕事」が必要であり、芸術家や大学教授というものがそれにあたる。「他人に何も期待しない」は可能かもしれないが「家族を遠ざける」とは十分な経済力で家族を養ったうえで、交渉を断つことを意味しており、国民年金だけではそれは実現できない。
ということで、財力が先か、そのために共感ゲームに長い間付き合って蓄財するのか、という鶏と卵の論争になってしまう。
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