江上剛「狂宴の果て」
題名から想像できるとおり、バブルとその崩壊をテーマにしたもの。
二部構成で第一部が幼なじみの3人の幼少から大学までの物語、第二部がバブルとその崩壊。
第一部の出だしは田舎の里山を冒険する3人の幼なじみ、スタンドバイミーっぽい出だし。そこでの知恵遅れの双子の弟の事故死、これが第一部のその後の展開および第二部の種になっていく。
冗長。
ITの世界では「冗長」というと冗長構成、フォールトトレラントでいい意味(あるいは高額)に使われるが、ここではもちろん本来の意味・・・・。
舞台を早稲田大学に設定し、大学周辺や高田馬場の著名な飲み屋、喫茶店、建物の名前が実名で出てくる。わずらわしい。作者が実名を出すことでリアリティを狙ったのであれば失敗。この界隈やお店を知らない人にはイメージが湧かないし、知っている人がイメージすることで描写を省略したようにしか思えない。
ストーリーも現実性に乏しいし、いくら浮かれた学生とはいえ発想が稚拙。
第2部は本来の江上剛、すなわち銀行っぽい。バブル時期の定期預金偽造証書による不正融資を幼なじみの3人が手を染め、やがて崩壊するというものである。第1部よりも展開はリズミカル。それはいったん不正をすると、それを続けないと不正が発覚するからである。
最後に学生時代に無理矢理別れさせられた恋人の忘れ形見が出てくるのはちょっとわざとらしい。
第1部の事故が第2部の不正を産む人間関係への伏線になるとはいえ、ちょっと長すぎる。
第一部が雑誌公開済みで第2部が書き下ろしのようだが、2作に分けるべきだろう。
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