服部文祥「サバイバル登山家」
服部文祥「サバイバル登山家」を読んだ。
1969年生まれだから刊行時(2006年)は37歳。
電池で動くヘッドランプや時計を持たず、テントはタープのみ、食料は米と調味料以外は現地でイワナや山菜を調達することを基本に歩く。フリークライミングからの発想でなるべく自然に近い形で山を歩く、というのがサバイバル登山らしい。表紙の写真で著者がかじっているのはイワナをおろすシーン。
南アルプスをこの形で歩いているが、日高全山縦走では、ラジオを持ち込み天気予報はチェックしている。
日高全山のレポートは最近、志水哲也「果てしなき山稜」で襟裳岬から宗谷岬までの一部として読んだが、志水のやり方は背負えるだけ背負い、食料がなくなれば下山して食料を調達してまた下山地点から入山するスタイル。服部のは基本的に入山したまま。米は多少はあるが、基本的には山菜とイワナで過ごす。だからいつもおなかがすいている。イワナがメインディッシュなのでそれを釣る時間もかかるし、燻製にして持ち歩けるとはいえ、イワナがいない、あるいは釣れないコースには行けないだろう。貴重なイワナをわざわざ食うな、という意見もある。楽しいのかねえ。
一方、同じ本に収録された冬の黒部横断など厳冬期にはもちろんこの手法はとれない、こちらはサバイバルよりは初登攀が目標。日本の山で未登攀なんてあるのかと思ったが積雪期の尾根単位だとまだあるようだ。まあ、こちらも厳冬期の悪天候下の初登攀ということで、なんか楽しいんだろうか、という感じ。
クライミングや高所登山を別とすれば、国内の山を歩くだけで飯の種にするにはこういう異彩を放たないと無理なのだろうな、と思う。志水哲也は黒部の写真という材料を見いだし、登山ガイドと山岳写真家の二足のわらじを履くことになったが、この著者はどうするのだろうか。
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