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米田憲司「御巣鷹の謎を追う -日航123便事故20年」

御巣鷹の謎を追う -日航123便事故20年

 角松敏生に「RAMP IN」というバラードがある。1985年11月のリリース。歌詞カードの最後に小さな文字で「Dedicated to the stewardesses of JAL 123」
 520人の犠牲者を出した単独機では世界最悪の日航ジャンボ機の事故で犠牲になった客室乗務員たちに捧げた曲である。ということに最近気がついて、またこの関係の本を読んでみたくなった。

 この事故は犠牲者の数の多さはもちろん、坂本九ら有名人が乗っていたこと、4名の生存者がいたことなどで今でも飛行機事故といえばこの事故を連想するくらい有名な事故となった。個人的にも(顔は知らないが)同じ会社の人が2名犠牲になったし、大阪に帰る予定の出張者が強引に飲み会に誘われて難を逃れたケースもあったことや、当初の報道で墜落場所が八ヶ岳に近い御座山(おぐらやま)とされていたことなどをリアルタイムに経験していたので記憶に残っている。

 航空機事故の本は柳田邦男「マッハの恐怖」を手始めに一時期かなり読んだが、御巣鷹山の墜落事故については、事故機のコクピットボイスレコーダー(CVR)の録音がネットで出回った頃、断片的に読んだがまとまったものは読んでいない。当時は、4系統の油圧系統が尾翼に集中していたことによる不完全なフェイルセイフによる操縦不能とエンジン出力だけで事故から30分飛行させた乗務員たちの技量という観点でしか見ていない。

 当時の疑惑というか謎は、①事故現場の特定と救助作業開始が遅れたのなぜか、②修理ミスによる隔壁破裂から尾翼が破壊されたという事故調査委員会の報告の根拠となっている機内の急減圧はなかったのではないか(生存者である落合さんとの証言との食い違い)→ 事故報告書はねつ造? → 何のために? → 本当の原因は?
というものであった。

 というわけでAMAZONの評価がよさそうな、米田憲司「御巣鷹の謎を追う -日航123便事故20年」を読んでみた。2005年7月、事故から20年を目前に出版されたものである。DVDも付属しているが図書館では映像作品は貸し出さないのでDVDはなかった。ま、DVDは出来が悪いようだし、まあいいか。

 著者は赤旗の記者。冒頭は事故発生の連絡から墜落場所をさぐるまでのドキュメンタリーでなかなか面白かったが、後半は上記の謎を探るものとなっており、文体もかなり変わる。よく調べてあるし、事故調査委員会の報告も含め他の説も公平に取り上げているが、前半のドキュメンタリータッチとはうって変わって冗長な印象は残る。

 ①については自衛隊が事故原因に関与していたのかどうかを確認するために米軍を含め現場に近づけなかったためではないか、②については、修理ミスをボーイング社が認めたのはジャンボ機全体の構造問題とするよりも得策とのボーイング社および日米の政治的な問題。修理ミスにより隔壁の金属疲労が進み、破裂し、穴が開いて急減圧が行ったために尾翼が大破というストーリーにした。そのストーリーを正当化するには相模湾に墜落した尾翼の部品などは回収して調査はしない、生存者の証言(急減圧発生時には突風が吹き、機内温度が-40度になるはずだがそのような兆候はなかった)を無視してボイスレコーダーの解析もしない事故から4日めで推定原因を発表した。さらには近年、情報公開法が施行される直前の年に当時の資料をすべて廃棄した。というような感じ。
 ②について本当の原因はこの本では断定はしていないが、いわゆる急減圧は発生していなかったとは言っている。原因としては尾翼構造の問題でフラッターが発生し、先に尾翼が破壊されたのではないか。それから徐々に減圧が起こった説を紹介しながらも、整備士たちの推論である、尾翼上部の変形(外的要因による変形)も紹介している。これは尾翼に何かがあたり壊れたというもので、著書では否定しているが、自衛隊の演習中の飛行物体の衝突なども可能性として残すことになるのだろうか。冒頭で墜落地点の情報が二転三転された原因として自衛隊による現場隔離説を著者はあげるが、この間の経緯や自衛隊のヘリなどの行動はいくら昔、雫石の事故(自衛隊機が民間定期航路を横切り民間機と衝突、墜落した)があったとはいえ、ちょっと異常な感じはあった。

 最後に事故調査委員会のあり方について著者は触れている。これについては戦後初の航空機事故の頃から、結論ありき、犯人捜し、構造問題隠蔽体質は柳田邦男あたりの著書でもよく言われていることである。

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