大森久雄「本のある山旅」
大森久雄「本のある山旅」は何冊か読んだ山の本に関わる書物の中では、読みやすく、内容も秀逸である。
作者の山旅を中心とした文章で、その山に関わるいくつかの書籍について触れているが、冒頭の「荒船山と神津牧場」でびっくりさせられた、というか、無知を思い知らされたというべきか・・・。荒船山と神津牧場といえば、大島亮吉の「荒船と神津牧場付近」である。大島の文章はエーデルワイスシリーズ5「思い出の山」に収録されているもので高校時代に読んだのが最初である。就学前に暮らした群馬県富岡で荒船山を毎日眺めていたこともありとても印象に残っているが、大島の「山-研究と随想」の復刻版を入手したこともあり、大森の本がこの山から始まるのは奇遇にも思えた。
が、大島の有名な文章は実は尾崎喜八の詩が盗作と言ってかまわないレベルまで下敷きになっていた。発表当時から一部の尾崎ファンには知られていたらしいが、その後大島が穂高で逝ってしまったこともあり、あまり触れられていなかったようだ。作者の大森さんもこれを知ったときはかなりショックだったようだ。
さて、そんな出だしで始まるが、作者が山の本の編集者であり、深田久弥や望月達夫、田淵行男、山村正光、横山厚夫など多くの人と交流があったため、出てくる本もかなりの量と質である。山岳関係の本は、山の本の編集者としては当然知っているべきものばかりのようではあるが、一般書籍がぼくには全然追いつかない。
それとなんだかんだ行っても大森さんもよく山に行っている。
さて、改めてエーデルワイスシリーズ全6巻の目次に並ぶ執筆者を眺めてみる。昭和43年の刊行なので当然ながら昔の人ばかりであり、集大成でもある。この本の刊行から40年たつが、この40年に刊行された本でこのレベルの本は作れないだろう。
Recent Comments