工藤隆雄「山のミステリー」
工藤隆雄「山のミステリー」を読んだ。
アマゾンのレビューではあまり芳しくないが、そうは思わなかった。
ミステリーと題がついているが、怪談だけでなく不思議な話が集めてある。すべて著者が見聞きしたもので、一部を除き提供元も明記されている。「山の軍曹」として名高い千畳敷カールの木下さん、雲取山荘の新井さん、北八ツ、しらびそ小屋の今井さん、黒百合ヒュッテの米川さん、陣馬山の清水茶屋の清水辰江さんなど名前をよく聞く人のほか、名前は知らなかったが小屋としては有名な南ア北沢峠・大平小屋、南御室小屋、奥秩父金峰山小屋、十文字小屋、大菩薩富士見山荘、丹沢鍋割山荘ほか各地の小屋番の話が多いので少なくとも噂話のレベルではなく、まだまだ科学では説明できない事象がたくさんあることに最近はかえってほっとする思い・・。
怪談はどうしても遭難者の話と結びつく。もしも自分が山の中で幽霊を見たらやっぱりとても怖いと思うが、生きていればただの登山者で亡くなったとたんに忌み嫌ってしまうのは本当はおかしなことと思うが、これは死や危険をさける生物の本能なので致し方ないか。
遭難話でも捜索隊がいくら捜索しても見つからないのに山は素人の肉親が行くと全く予想外の場所を探して遺体を見つけてしまう話などは、肉親・家族の不可思議さを知る思いである。それにしても遭難する人の背後に霊が見えてしまう小屋番というのは凄い。
不可思議な話で興味があったのはしらびそ小屋の今井さんが他の登山者とみたUFO着陸シーン。今井さんは明け方に離陸のシーンも目撃している。しばらく上にあがるとそのまま消えてしまったということなので、光学迷彩くらいできるんだろうなあ、UFOは・・・。
S県とY県をつなぐトンネル工事で小屋の水が出なくなった話はイニシャルだけで雁坂トンネルと分かる。もう話題にしてはいけないらしいが。
うらやましいのは金峰山小屋の福の神かなあ・・・。
惜しむらくは著者の行動範囲のせいか逸話の場所がかなり限定されているように思える。北アルプスは薬師岳の愛知大大量遭難の話があったが、槍穂高や立山周辺ではいろいろありそうな・・・。
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