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石川英輔 「大江戸テクノロジー事情」

石川 英輔 大江戸テクノロジー事情
石川英輔 「大江戸テクノロジー事情」を読んだ。
 著者は江戸時代風俗研究家・作家でNHK「コメディー道中でござる」で江戸風俗の解説をしていた。
 江戸時代は長い鎖国で海外からの技術流入がなかったがそのなかで江戸の日本人が発明・発展させた技術を解説している。
 和暦、和算、時計、からくり人形、富士塚、錦絵、銃、刀、天文学、馬、鍵、花火、朝顔
 どれも興味をそそるものばかりであるが、和暦(大小暦)、時計、天文学の一連の暦関係が面白かった。
 いわゆる太陰暦・旧暦であるが、江戸の人々がなぜ旧暦を使われたのか。いや明治になって新暦になるまで日本人は奈良時代からずっと旧暦を使ってきた。
現在の新暦のように1月1日の曜日がわかれば1年のカレンダーが機械的に作れる暦と違い、30日までの月、29日までの月が毎年変化し、たまには閏月があって13か月ある旧暦は、現在からみるとなんと不便なと思えるが、月明かりの社会では旧暦が便利だった。電灯の50分の1くらいの明るさの行灯やろうそくしかなかった当時の人々の、太陽と月を基本とした生活。ある日の夜の月の明るさがどの程度かというのが大事な社会での旧暦の立場を考えるとそうなる。お月見はもちろん、夜に盆踊りが開催されるお盆は満月である15日でなければならない。新暦を使いながら別に満月の日を計算する必要はない。

 銃、馬といった軍事面も面白い。江戸幕府は当然軍事政権であるが、元和偃武以降の平和ボケで軍事的制約を受けた外様大名はもちろん幕府そのものも実体的な軍事力がどんどん衰退し、幕末には将軍の前での閲兵式でも馬に乗れない旗本がずらり・・・、織田信長という一武将が3000丁という世界一の数の銃を持っていたころとは大違い。

 個々の項目についてもいきなり江戸時代に入るのではなく、銃や花火であれば火薬の歴史から紐解いてくれるのでわかりやすい。根底には江戸時代の省エネ社会、利益よりも遊びに使ってしまう社会への好感と、近代以降の西洋資本主義が行った破壊と利益追求への著者の嫌悪感がそこここににじみ出ており、それを嫌う評価もあるが、からくり人形?すごいね、で終わらずに考え込んでしまう部分を持つ著書である。

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