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旭山動物園の本4冊

坂東元「動物と向きあって生きる」
 坂東元「動物と向きあって生きる」を読んだ。本文の漢字にはルビが振られ小学生でも読めるようになっている。

 著者は旭山動物園の副園長。この動物園が廃園寸前から立ち直り、今や日本一の入場者数を誇る人気動物園となったことは有名だ。坂東さんは「行動展示」といわれる手法で動物本来の能力や凄さを見せることで、この動物園を有名にしたかずかずの展示館を考えた人である。特集TVになると必ず案内者として出演し、興奮しているタレントを横目につまらなさそうな顔をブラウン管、じゃない液晶に映し出している。これだけ有名になって取材攻勢ではいろいろ疲れるのだろうなあ、と半ば同情の気持ちで副園長を眺めていた。
 ちなみに坂東さんもぼくとほぼ同年代。
 
 そんな坂東さんの著書なので、動物園の復活までの話を動物の話を織り交ぜながら楽しく語るのかな、と思っていた。が、もっとストレートな意思表示であった。

 転校が多かった小学生のころの生徒はもちろん教師によるいじめ、それを受けてどんどん昆虫にのめりこむ坂東少年の記憶から始まり、虫から鳥、やがて獣医をめざし、旭山動物園での野生動物との出会い。それぞれの段階で動物とは命とはということを様々なつらい思い出から心に刻んでいく・・・・。小学生時代の最初のあたりを読んだだけど、これはとても重いテーマの本かもしれないと気がついた。
 彼が語る、野生や命についてここで簡単にまとめることは難しいが、彼の熱い語り口に星野道夫を思い出した。星野道夫はアラスカの自然、クマやカリブーなどの動物や森を含めたアラスカの自然そのものを畏敬してやまなかったが、坂東さんの野生への思いも似たような根を感じる。

 ペットと野生動物の厳しい区分け、動物園の在り方、野生動物たちの共存はけっして「仲良く」ではないこと、「いのちは大切」という耳障りの良い言葉のウソなど、動物園の動物を見て「カワイイ」としか感じなかったぼくには、目をさまされる内容であった。
 典型的な話がこの本にも記載されている「レッサーパンダ風太くん」事件。ある動物園でレッサーパンダの風太くんが立ったということがメディアでもてはやされ、他の動物園でも同じような話が出てきて、ブームになったことを氏のブログで批判したことに、逆に批判された出来事である。坂東さんは、野生の姿を見せるのが動物園の使命であり、餌で無理やり立たせるような芸をさせて「見世物」にしたことや、それをメディアがもてはやしたことを批判したのだが、なかなか受け入れられずブーイングの嵐となり、やむなくお詫びのブログを書いた。
 この事件で、旭山動物園の人気は、野生動物のありのままに見せる行動展示にあるのではなく、その結果としての動物のかわいさのみに由来していることに氏は改めて気がつくことになり、自分たちの努力が途上にあることを知る。

 自然保護や温暖化といった問題についても動物のプロとしての観点から述べられており、なかなか興味深い一冊である。
旭山動物園のつくり方―「伝えるのは命」最北の動物園からのメッセージ

 とにかく、旭山がここまで復活できたのは、どん底時代の動物園の周囲、とりわけ上司にあるのではないかと思わせる表現が本書のなかにいくつか見られたので、現在の園長が中心の本も読んでみた。それが「旭山動物園のつくり方」である。この本で園長が述べていることは坂東さんが言っていることとまったく同じであり、動物園としての姿勢がぶれていないことがよくわかる。

旭山動物園へようこそ!―初公開!副園長の飼育手帳・写真

 もっと気楽な読み物としては「旭山動物園へようこそ!―初公開!副園長の飼育手帳・写真」がある。これも坂東副園長の文章になるものであるが、動物園紹介の本なので、考え方は「動物と向きあって生きる」ともちろん同じながらももっと表現がやわらかである。



旭山動物園写真集 (DVD-VIDEO(1枚)付)
で、ぼくのように遠くてなかなか行けそうにない人には「旭山動物園写真集」が良い。DVD-VIDEO付でアザラシやペンギンの動画も見ることができる。本文の写真集はペンギンなど人気動物に限らず、かなり広範囲に収録している。2005年の刊行なので、まだゾウも写っている。

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