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福原直樹「黒いスイス」

黒いスイス
 福原直樹「黒いスイス」の「黒」とは暗黒面である。
 国民皆兵制度の永世中立国スイスを知る本を探したが見つからなかったので、題名があやしいこちらを先に読んでみた。
 多少でもスイスの歴史を知っている人には驚くことでもないのかもしれないが、ヨーロッパアルプス、レマン湖、時計くらいのイメージしかないぼくには十分衝撃的な内容である。
 この本に書かれたスイスの暗黒面は、ジプシー(ロマ)の子供誘拐、親からの隔離、差別といったナチスのホロコーストを彷彿とさせる人種差別政策に始まり、そのような政策を許す国ならばやるであろう、第二次大戦中のユダヤ人への難民受け入れ拒否、つい最近まであった核装備計画、移民への激しい嫌悪と監視社会、他国では考えられない麻薬政策そしてマネーロンダリング・・・。いずれも公的な資料とインタビューによるものである。
 フランス、イタリア、ドイツに接した小国が生き抜く知恵ともいえるが、美しいアルプスの国からはなかなか
想像できない過酷な現実でもある。
 マネーロンダリングについてはゴルゴ13の秘密番号口座ではないが、たぶんゴルゴ13以上の莫大な不正蓄財による金融資産がこの国にはいまだに眠っているようだ。リストの中にはマルコス(5億ドル)をはじめ著名な独裁者が多数あった。かの国では所得の申告もれ程度の脱税は犯罪ではないようで、高率な所得税を課す他国から救うという気持ちすらあるようだ。残念ながらぼくには関係ないが・・・。
 
 これらスイスの黒い部分の大元は外国人労働者による労働市場のひっ迫に対する国民の異常な警戒心から来ているようだ。たしかに肌の色や目の色が異なり、別の言語を話す人が周囲にあふれるのは生物学的に防衛本能が働くだろうし、同じような思いをしないこともないが、少なくともこの本が執筆された2004年になっても国民のかなり多くの部分がユダヤ人をヒトラーのいる国に追い返した当時とあまり変わっていないのはいかがなものかと思う。最近この国でも勃興しているネオナチの人たちはナチスと同盟した日本を尊敬していると本書には書いてあるが、ネオナチ以外のふつうのスイス人は黄色い肌のアジア民族を本心ではどう思っているかはわからない。

 スイスは連邦政府よりも州のほうが力があり、その州の国民投票により決定されることもいまだに多く、直接民主制の発祥として有名であるが、間接民主主義とどちらが正しいのかどうか、スイスの例を見ると考えざるを得ない。民主主義とは権利と義務の組み合わせてあるはずなのが、権利、もっと言ってしまえば、趣味・趣向で決定していないか、という印象がある。同じようなことは、日本でも近々始まるらしい陪審員制度にもいえるかもしれない。陪審員がすべて正しい法律知識と常識の持ち主かどうか、ということである。同じことは間接民主主義にももちろん言えるが、正しい情報を伝えられていない場合、間違った判断をする可能性はどちらが多いのか。

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