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江畑謙介「日本防衛のあり方」

日本防衛のあり方―イラクの教訓、北朝鮮の核
江畑謙介「日本防衛のあり方―イラクの教訓、北朝鮮の核」を読んだ。2004年の刊行である。

 本書は「武力を持たなければ、相手も攻撃してこない」という現実から目をそむけて安心している人たちに最低限の軍事知識と国際情勢を教示する啓蒙書と言える。特に国政やメディアの報道で故意あるいは無知なために展開された武力保持=戦争という国民受けする曖昧かつ誤った概念へのアンチテーゼといえる。

 イラク戦争の総括、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイル、日本の選択肢の3部構成となっているが、最初の2部が現状分析であり、結果として最終章があるわかりやすい構成である。
 イラク戦争の総括では戦争に直接かかわった米軍とイラク軍の軍事的・技術的な検証はもちろんあるが、それ以上に興味深いのが当時のフセイン政権が米軍に本気で勝てると思っていた証拠とその背景である。要するに独裁体制によるトップへの適正な情報伝達の阻害と政治的に「負けたことがない」という宣伝、負けたことがないから改善する必要がないという道筋である。イラク戦争の勝敗は米軍とイラク軍の暗視装置の差であるとよく言われる。米軍が相手の赤外線を検知するため火災の煙幕の向こうの敵を把握できたのに、イラク軍はベトナム戦争当時の光増式(弱い光を強く見せる)であるために火災の炎が明るすぎて使えなかったという話である。これは事実のひとつであるが、なぜそうなったのかというのが先のトップへの情報の問題であり、独裁政治、とりまき政治が弱体化していく理由である。
 同じような状態は第2部の議論でも当然あり、量はすごいが朝鮮戦争当時とあまり変わらない装備が実態のようだ。しかし、だから安心できるわけではなく、弾道ミサイルや核の問題が解決されているわけでもない。特に北朝鮮の場合は、イラクとは違い、平地が少なく、多くの民間人が戦場となる範囲に居住しており、兵器のほとんどが地下に格納されていることから、仮に米軍が攻撃をしかけたとしてもイラクのように簡単にはいかないと筆者は推測する。また仮に南北で開戦となると国境から40キロでしかないソウルは一旦は間違いなく壊滅的な破壊を受けるとも予想する。
 また南北情勢についてはロシア、中国とも経済的に韓国(資本主義)主導となる統一は阻止したいはずとの意見も述べる。
 日本の選択肢では自衛隊の装備が米軍に次ぎ近代的ではあるものの「専守防衛」のための政治的配慮のために遠距離での運用を行う必要がある国際貢献や平和維持活動にいかに効率が悪いものであるかも述べられており、誤った国民の認識により、結果的に無駄な税金投入が行われ、しかも日本以外の世界では認められない議論で安心し、国際社会から孤立を深めていく日本の現状がわかる。
 「自衛隊=>軍隊=>太平洋戦争」したがって九条死守という思考はいかにもヒステリックな日本人らしい発想であるが、戦後の日本人をここまでヒステリックにさせたのは戦前のマスコミや政治であることは間違いない。

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