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江畑謙介「安全保障とは何か―脱・幻想の危機管理論」

安全保障とは何か―脱・幻想の危機管理論
 続いて江畑謙介「安全保障とは何か―脱・幻想の危機管理論」を読む。
 江畑さんは、ご存じのようにTVで独特の髪型を振りかざして語る軍事ジャーナリストで、容貌からうさんくさい感じを持っていたが、この本はうさんくさいところがない。TVで語るよりもよっぽど常識的かつ論理的でわかりやすい。
 「憲法から見た安保条約」の川村さんは「ソ連の脅威がなくなったから(攻撃されない)」と呑気なことを言っていたが、江畑さんはソ連の脅威がなくなったあとの世界情勢こそが難しいと始める。資本主義対共産主義あるいは国対国というわかりやすい対立構造ではなく、国の中でもあるいは国とは関係なく民族、宗教、党派での対立(中東やアフリカ、中国など)が起こり、より複雑かつ「何でもあり」になっている。「何でもあり」はまさに字の通りで、国対国であればとりあえず国としての体面を保ち最低限のルールのもとでの戦いであった、宗教・民族やイデオロギーの戦いは、国際社会での体面とかを意識しないので国よりもさらにひどいということ。自爆テロ・無差別テロは国家の軍隊では指示しないだろう。
 石油資源を握る中東がアメリカからもっとも遠い地域であり、経済活動のほとんどが海運である現実のなか、石油を確保したい中国や民族自決に目覚めた東南アジアの影響が大きな海運ルートの安全確保を誰がするのか。それができるのは今のところアメリカしかなく、紛争があった場合に現場に急行ができる位置にある米軍基地からの出撃や出動を日本は安保条約違反であるからと拒否できるのだろうか。日本人相手のテロがあって当該国から自衛隊出動要請があっても拒否する国を世界は認めるのだろうか、代わりに出撃する米軍の家族は日本を好きになるだろうか。
 ざっくりいうとそんな話が順序を追って記述される。
 憲法の条文あるいは国連憲章だけを前提にしてこれらの地域の安全をいかに守れるのか(守れない)というのが氏の主張である。

 氏の主張するところは軍備は外交の手段のひとつであるということである。これだけだと軍国主義とすぐ批判されそうであるが、予算規模だけならアメリカにつぐ世界3位の軍事大国である日本の現状、仮に安保がなくなった場合に間違いなく日本は軍備増強するというのが世界の専門家の意見であり、そちらを警戒するほうが世界では趨勢であるということを知っておくべきだ、との意見である。もちろんそうなった場合、現在の所得税率では防衛費はカバーできないだろう。

 九条を守ろうという人たちはこういった現実の課題に、日本人だけでなく世界の人が納得できる対策を提示する必要があろう。

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