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能勢 伸之「ミサイル防衛」

能勢 伸之「ミサイル防衛 日本は脅威にどう立ち向かうのか」
 では、北の国から(もちろん富良野でも倉本聰でもない)のミサイルにどう備えるのか、というのが能勢 伸之「ミサイル防衛 日本は脅威にどう立ち向かうのか」である。
 「憲法から見た安保条約」の川村さんなら、2006年7月の7発のミサイル発射実験も、あれはイランにミサイルを売るための性能デモンストレーションであって、本気ではないし、これを外交交渉に使うこともない、とおっしゃられるかもしれないが。
 この本の著者能勢伸之氏はフジテレビ政治部専任部長兼解説委員であり、防衛問題が長いとはいえ研究者ではなく、マスコミのひとなので、本書の書き方もやや聞きかじり的な部分もある。防衛問題だけでメシを食っている人ではないのでしょうがないだろう。
 それでも、弾道ミサイルの定義、敵ミサイルの能力探査方法、発射の検知方法と続き、迎撃方法と北のミサイルへの対処方法とつなげる、わかりやすい解説本である。
 
 ミサイルなんて少なくとも米軍はたくさんの種類を持っているんだろうと思っていたのだが、大間違い。冷戦時代のSALT/STARTという名前だけは聞いたことがある兵器削減交渉で米ソとも廃棄してしまっており、ICBM(大陸間弾道ミサイル)くらいしかない。そもそも弾道ミサイルというのは大気圏外まで打ち上げてあとは重力で弾道(放物線)を描いて落下するものなのでそんなに正確には当たらない。ICBMでも良かったのは核弾頭を積むので、20-30キロずれても効果があったからだ。最近の弾道ミサイルは50メートル程度の精度があるようだ。
 一方、迎撃ミサイルはピンポイントで当てる必要があり、精度が違うのだ。ゴルフに例えれば攻撃用ミサイルはフェアウェイを外さなければ十分なドライバーに対して、迎撃ミサイルはドライバーで打ったゴルフボールをフェアウェイに落ちる前に別のボールで当てるようなもの。ドライバーを振るのは誰でもできるが、飛んできたボールに当てるのはウッズでも無理だろう(星飛雄馬か花形満ならできるかも)。それを可能にするのが最先端のハードとソフトである「ミサイル防衛システム」であるが、湾岸戦争で有名になったパトリオットから始まるこのシステムもまだまだ開発中ということでけっして万全とはいえない。
 ミサイル発射事件を聞いたときは、所詮あの国のレベルでは大したことはないのだろうと思っていたが、実はミサイルについては輸出ができるほどの先進国であり、7発のうちのいくつかはかなり近い場所に落としておりそれもその技術の証明ということらしい。

 弾道ミサイルが発射されると監視衛星や地上レーダー、イージス艦などが数秒以内で検知、2分程度で迎撃ミサイルが発射されるという。そのための監視衛星の役割、弱点、早期警戒機やイージス艦の実力、レーダーの種類やミサイルの推進方法などメカ好きには面白いが、メカの中で動くソフトやそれぞれを結ぶ無線データ通信システムなどをもう少し掘り下げた解説があったらなおよかったが最高機密なんでそれは無理だろうな。最近自衛隊でイージス艦の情報漏えいが発生したが、その問題の重大さもよくわかる。
 2006年7月のミサイル実験も米軍は5月から兆候をつかみ各種警戒システムを準備、2発目が発射されたあとに探査機が離陸、5発目、6発目が発射されたときは、すでに会見中であったが、リアルタイムに発射場所、種類を特定して連絡してきたようだ。
 そのくらいのレベルに来てはいるミサイル防衛システムではあるが、まだまだ日米の壁や命中精度、さらには新たな方式による攻撃ミサイルの登場など、ここも追っかけっこであり、莫大な資金と時間がかかることは理解できるが、その価格が妥当かどうかというとかなり怪しい。

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