椎名誠「極北の狩人」
椎名誠の本は一部のSFを除きほぼ読んでいる。たまたま仕事が国分寺だったので「さらば国分寺書店のオババ」を読んだらオババはお得意様だったなんてこともあるが、その後に「哀愁の町に霧が降るのだ」で、椎名誠、木村晋介らの共同生活と学生時代の友人の下宿を重ね合わせたりしたこともあった。
椎名誠は国内はもとより海外の辺境への旅ものも多く、そのほとんども読んでいるが、最近、星野道夫のおかげで北の方にも興味が湧いたので「極北の狩人」を読んでみた。
DVDが付属しており本の一部がビデオで再現できる。DVDを先に見てみた。DVDはロシアのエスキモーの家族と狩の様子である。けっこう近代的な(カナダ製らしい)な家に住むエスキモーであるが、食事は生肉を真ん中において各自がナイフで好きなところを食べるのがふつうで、皿を使ったのは椎名などの取材陣へのサービスのようだ。犬そり、ライフル(は警察に取り上げられていたので散弾銃)でのアザラシ狩の様子、ワカサギ釣りを彷彿とさせる氷海でのホヤ取りの様子などが寂れた町の様子とともに収められていた。全体的にはやや明るめの印象があった。
さて、本文に取り掛かる。前半はアラスカ、カナダと来て最後にDVDになったロシアの話になる。
DVDから受ける印象と本文の印象はかなり違う。また描写している事象もかなり差がある。DVDの方が万人に受け入れやすく作ってある感じである。DVDは宮城県の東日本放送が開局30周年記念に製作したもの、ということで地方とはいえTV放送用のものである。
同じものや人を取材してもTVとエッセイではかくも異なる。椎名自身、はしがきで「私自身いくらか戸惑っているのだが、本文を読んでいただいた方が極北民族の世界をより深く知る材料になれば、と思っている」と記している。
犬そりのスピード感やアザラシ猟における狙撃の距離感などはたしかに映像の方が説得力があるが・・・。
そうそう、それとアラスカではMのすごい蚊の話が出てくる。24時間とにかくまとわりついて完全武装の蚊帳のような服を着ていないと「死んだほうがまし」と思えるくらい刺されるらしい。アマゾンやオーストラリアでかなりの蚊の経験がある椎名も唖然とするしつこさである。カリブーは子供のカリブーを蚊から守るように行動するという。カリブーについて語る星野道夫の本には蚊についての記述の記憶がないが、どうだったのだろうか。
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