坂本直行「雪原の足あと」
「雪原の足あと」は1965年刊行の坂本直行の画文集である。版元の茗溪堂で1975年復刊分が購入できるようだ。昭和32年刊行の「原野から見た山」以降のエッセイが主体であるが、前作よりも今回の方が同じ北海道でもより広範囲になっている印象。
刊行の昭和40年は坂本はすでに開墾生活に決別し、画家に専業しており、その気持ちの差がゆったりとした紀行文ににじみ出ている。多くは山や動植物にかかわるエッセイであるが、書名となった「雪原の足あと」は開墾生活に決別するにあたっての挫折感がにじみでるやや悲痛な文章である。この短文だけではうちにこめられた意味がわかりにくくまたそのように書いたのであろうが、「開墾の記」を読んでいるとそこが見える気がする。
とはいえやや重いのはこの一文だけであり、その他は、特に友人との山行紀行はいつもながら楽しい。また「原野から見た山」よりも大きなB5になったこと、カラーが多いことから画集としてもかなり良い。(「原野から見た山」も茗溪堂で復刊中のものはB5)
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