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藤原正彦「国家の品格」

国家の品格  藤原正彦「国家の品格」が流行っていると聞いたのは今年の初めくらいだったか。ただ、そのネーミングがやや右翼的な雰囲気もありちょっと敬遠していた。
 出版社の宣伝文句はこんな感じ。
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 「論理」と「合理性」頼みの「改革」では、社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神であり、「国家の品格」を取り戻すことである。
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 うん? 武士道精神? こりゃ困ったもんだ、と思う。

 しかし流行語大賞にもなったことだし、読んでみるかと・・・。

 語り口は割りと温和に常識に訴える文調であり、すなおに納得できる。
いわんとすることは上の宣伝文句のとおりなのであるが、この宣伝文句にはそれぞれに解説が必要である。
 例えば論理よりも情緒。風が吹けば桶屋が儲かるのひとつひとつのステップ(風が吹くと目にごみが入り失明し、失明した人が三味線を弾いて暮らす~)の確率の検証やゲーデルの不完全性定理をあげ論理だけの限界を説く。
 情緒とは要するに平均的な知識と教養を元にした正しい常識だろう。法律に触れなければいかなる方法でも儲けていいと思うか、それは卑怯だからいけないと思うかどうか。ライブドアや村上ファンドのやり方に、旧体制への批判的な動きにある部分は共鳴しても、胡散臭さや狡猾さを感じるかどうか。
 頭脳明晰でロジカルシンキングを実践し、相手のことを考えているつもりるでいる人が、実は相手にされていない(しかもそれに気が付かない)。そういう人には情緒が欠けていることが多い。

 日本の総合的な国力の低下は「悪いものは悪い」と思える教育がされなかったこと、日本語と日本文化を学ぶべき年齢で無理に英語を押し付けた「ゆとり教育」などさまざまな分析と改善提案がなされている。
 幕末の頃、古典・漢文の教養と武士道の思想を身につけた武士が、英語がしゃべれなくても欧米人から尊敬されたこと、英語は話せても日本文化を語れない現代人・・・。
 講演原稿をもとにしているせいか、正直のところ日本人が書いた「ジャパンアズナンバーワン」という印象もあり、だからこそ売れたのだろうという感じがする。

 武士道精神と言っているのは恥を知ること、常識を身につけることということだろう。昭和の始めから徐々に失われたと言っているが、個人的には昭和40年代前半くらいまではそこまではいかなくても少なくともいわゆる常識が通用していた時代ではなかたっかなと思う。そしてその頃までは学校の先生には教養と威厳があり、少なくとも父兄よりはまっとうだった。

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