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飯田朝子「数え方もひとしお」

数え方もひとしお 数え方の辞典

飯田朝子「数え方もひとしお」を読んだ。
 本当は同じ著者の数え方の辞典を読みたかったのだが、こちらは地元の図書館になかった。

読書歯車のねじまき仕事「数え方の辞典」は日本語でけっこう難しい物の数え方の辞典ということで辞典としてはかなりの売れ行きを誇った書籍ということを、実は椎名誠の読書歯車のねじまき仕事で知った。
 椎名誠は社会人なりたて当時、国分寺に勤務していたので「さらば国分寺書店のおばば」を皮切りにあらかた読み、今でも気軽なエッセイを時々読んでいる。「読書歯車のねじまき仕事」は珍しく読書案内的なエッセイである。
 「数え方もひとしお」は数え方をテーマにしたエッセイという感じで、衝撃的な数え方や単位の話はないが、なぜそのように数えるようになったかの推理がなかなか面白い。と、同時にすでに辞典を刊行している著者にしてまだまだわからないことが多いというのが意外であった。
 エレベータの数え方が例の六本木ヒルズの事故発生当初が「基」であったのが徐々に「台」に変っているのがなかなか興味深かった。
 もっとも意外だったのは著者の年齢。数え方関係ではいくつかの著書があり、辞典も刊行しているのでけっこうな高齢で学会の大御所的な人かと思ったら、1969年生まれの30代だった。

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漆(うるし)の本(その2)

「産地別 すぐわかるうるし塗りの見わけ方」 輪島塗、会津塗といった産地別にその特徴などを紹介している。最初に工程や用語集などを置き、産地別の解説が続く。
 津軽、秀衡、浄法寺、鳴子、輪島、山中など国内が琉球を含め31、海外はタイ、ミヤンマー、ベトナム、朝鮮、中国、台湾。産地別に特徴や歴史のほかに下地や塗りについても記載され、巻末に買い方、手入れなどの解説、詳細な用語集もついている。
 最初にページをめくったときは、さながら観光ガイド的な甘い構成かと思ったが読むべき材料は揃っており、なかなかの良書であるが結局のところ「見分け方」は信用できる店で材質等の表示を見てそこそこの価格のものを買うことのようだ。2000年12月刊行。
荒川浩和・山本英明・高森寛子「ほんものの漆器―買い方と使い方」
1997年刊行のとんぼの本。表題のとおり入門用の実用書である。著者の荒川浩和は東京国立博物館漆工室長であり漆芸史が専門。山本英明は塗師(ぬし)、高森寛子は漆器や道具に詳しいエッセイストである。漆器の使い方の話や所蔵品の写真では白洲正子も顔を出している。
 材質、価格、買い方、手入れなど基本的なQA、用語集も揃っており実用的な入門書である。刊行年が古いのでその点を留意する必要があろう。
 なお、20年以上前から販売しているという山本英明のお椀はリンク先で見たら16,800円。この本では16,000円だった。

高森寛子(文)・大屋孝雄(写)「漆の器それぞれ 」
 上記の「ほんものの漆器―買い方と使い方」を編集した高森寛子が懇意にしている漆職人たちの作品、主としてお椀、をインタビューを交えて紹介するやや高級なカタログといえる。もっとも価格が表示されていない作品も多いが。
 途中に漆器ができる工程を漆掻きから解説してあるものの、漆器について全く知らない状態で読むのはやや困難。上の2冊のうちいずれか程度の基礎知識はいる。でないと用語や雰囲気がわからないだろう。というわけでこの3冊のなかでは最後に読んだ。子供向けの漆器(お椀やスプーン)などの解説もある。
 巻末にそれぞれの作者の作品が見られる場所などの情報が掲載されているが、多くは地方でありWEBを持っている方も少ない。したがって気に入ったからといって簡単には購入できないが、2006年7月刊行であり現代の著名な作家のカタログといえようか。

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漆(うるし)の本

漆(うるし)についての本をいくつか読んだ。
 山や、ハイカーにとって里山に生える漆の木は嫌われ者である。かぶれるから。家にあるお椀もたぶんみんな樹脂性のもので、漆には全く縁がなかった。
 最近、漆器のウルシが乾くという事象が水分蒸発ではなく、化学反応・酸化であるということを聞いて、ほう、と思っていくつか本を探してみた。

松田権六「うるしの話」
松田権六「うるしの話」
最初に読んだのがこの本。文庫なので読みやすそうだと手にした。
 人間国宝、文化勲章受賞者、「うるしの神様」といわれた著者が昭和30年代の終わりに3日間の対談で述べたもの。職人肌でなかなか手厳しい部分が多いが、漆の木の話から樹液である漆そのものの物理的特性はもちろん、素材、工程、技法などを詳細にその歴史を含めて解説しており、入門書としても最適と思う。
 昭和初期から国内はもとより船舶や万年筆など漆を海外からも注目させ、楽浪郡遺跡、正倉院御物、中尊寺金色堂修理など、豊富な経験談は大変面白く含蓄がある。
 この本を読んだあとでNHKの「JAPANを訪ねる旅」を見たので駆け足でやや表面的なこのTVも別の見方ができた。
山岸寿治「漆よもやま話」
山岸寿治「漆よもやま話」
こちらはまさに四方山話であって、漆そのものよりも日本の文化といった面の話が多い。木の文化、色と日本人、道具と技(わざ)と冒頭から100ページ以上にわたって漆のうの字も出てこない。後半は漆器や漆芸の話になるが、やや駆け足の印象を免れず、入門書としては読みにくい。むしろ前段を日本文化論として読むと面白い。

P.S 2006/12/10追記
「漆芸界の巨匠 人間国宝 松田権六の世界」が12月19日から東京国立近代美術館で開催される。詳細はこちら

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田淵行男「高山蝶」

 田淵行男「高山蝶」は1959年刊行。当時の定価3,800円が今だとどのくらいになるのか不明であるが(中古相場は10万円弱)、この本を手にした水越武が田淵への弟子入りを決意する写真集である。
 今回は都立日比谷図書館のものを地元の図書館経由で借りた。
 ぼくより古いこの本は95%以上がモノクロで時折まざるカラー写真はその多くがあとから貼られている。蝶の生態記録でありその生態のほとんどの時期が幼虫であるからきれいな蝶の写真集というよりは地味なイモ虫・毛虫の写真集である。田淵のポリシーは現場を観察することであり当然そのほとんどが山の中である。蝶の卵は葉の裏、幼虫は石の裏ですごすことが多いので常念乗越で無数の石を裏返す作業が続く・・・。後年の田淵の写真集に比べて本人のスナップが多いのは、昨年NHKの「小さな旅」にも出演した堀勝彦氏なども調査に同行していたためである。
 学術書としても一級品だろうが、山の写真を見ているだけでも楽しい。

 右端が気になる方はこちらをどうぞ。


いかにも学術書の雰囲気の表紙

巻頭を飾る江崎悌三先生の書簡

後の「日本アルプスの蝶」にも掲載された
中村清太郎の「高山蝶発見物語」

中村清太郎が発見したクモマツマキチョウ

見開きを飾るのは「山上黎明」
「日本アルプスの蝶」ではカラー版の同じ構図を使用

高山蝶の分布図

今は見られない安曇野のゲンゲ

高山蝶の生活環境

当時としては貴重なカラー写真

重要なページは日英併用

巻末の高山蝶概説は英語版も収録


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江上剛「霞が関中央合同庁舎第四号館 金融庁物語」

霞が関中央合同庁舎第四号館 金融庁物語
 江上剛「霞が関中央合同庁舎第四号館 金融庁物語」を読んだ。

 話はともかく題名が長い。霞ヶ関中央合同庁舎4号館とは金融庁がある建物であるが、建物名を出す意味がない。建物の中で物語が進行するなら、例えばフロアに分かれた部署ごとの闘争とかそういうのがあるなら建物名も意味があるだろうが、物語の舞台は主として検査に入った銀行である。
  物語の最初と最後に登場する金融庁を志望し内定したキャリア予備軍の学生の描写もちょっと不可解である。

 モデルは検査忌避が発覚したUFJ銀行。本店の書庫に「やばファイル」をダンボールで多数隠蔽し内部告発によって発覚するという例の話である。モデルがモデルだけに読み始めれば結末がわかってしまうのだが、そこはだんだんストーリーテラーとしての腕を上げている著者のこと、飽きさせずにエンディングを迎える。物語は兄が統括検査官、弟は銀行の広報部という2時間ドラマにはわかりやすい構成。見所は兄の検査官が上司とともに金融担当大臣に検査忌避が見られたことと引当不足を報告するところではないか、と思う。このとき一瞬考え込んだ大臣は微笑みとともに決断をする。UFJ銀行が東京三菱銀行に吸収合併が決まった瞬間である。もちろんこの部分はフィクションであるが、大きな事件は案外とこんな感じで決まるのかな、と思う。

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GoogleMaps API自動作成ツール「轍(わだち)」

 遅ればせながらGoogleMapsでもいじってみようかと・・・。
 GoogleMapsはwebにリンクをカンタンに貼ることができるが、地図そのものを貼るのはAPIを使わないといけない。それ以前にGoogleのサイトで使用するサイトごとにAPIキーを取得する必要もあるが、APIは基本的にはJavaScript上で使うことができるのでとりあえずサイトに地図を貼るくらいであれば、PC経験者ならば割りとカンタンにできるので、とりあえずAPIキーを取得して試してみた。

 しかし、意図した動作をさせようとするとかなり面倒である。文字コードがUTF-8なのでShift_JISにしか対応していない自作HTMLエディタで編集もできない。まあ、これはTeraPadなどを使えば解決するが。
 てなわけで、ネットをうろついていて見つけたのが「轍(わだち)」である。

 「轍」はGoogleMaps API自動作成ツールとなっているとおり、カシミール3Dが吐き出すGPSファイルをもとにGoogleMaps上にトラックやウェイポイントを記述したhtmlを自動作成するソフト(個人利用はフリーソフト)である。
 カシミールのGPSログ(GDBファイル)をカシミール上で開き、必要なトラックをTRKファイルに変換、ウェイポイントも必要に応じてWPTファイルに変換しておく。実際のGPSからのログでなくてもカシミール上で作成したルートなどからでもかまわない。
 これらを轍で読みこみ、HTML作成を行う。ログ数が多い場合は適当に間引いてくれるし、プロフィールマップ自動作成をONにしておけばGPSログの高度から高低グラフも同時に作成しHTMLにしてくれる。HTMLの色などはあとから手でHTMLを修正すれば良い。

 保管しているGPSログにあまりまともなものがなかったが、さっそくいくつか作成してみた。一般道から高速道に入ったり、新幹線のログはそれなりのスピードで再生できる。

金峰山から多摩テッククアガーデン
霧ヶ峰
霧ヶ峰2
北岳
瑞牆山
新幹線 新横浜~新大阪

ちなみにこちらのページに表示されるGoogleMapsの地図はAPI調査中のもの。といってもマーカーをドラッグ&ドロップするとドロップ位置の緯度経度を取得するだけのもの。

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藤野英人「スリッパの法則」

スリッパの法則―プロの投資家が明かす「伸びる会社・ダメな会社」の見分け方
 藤野英人「スリッパの法則」を読んだ。
 副題に「プロの投資家が明かす「伸びる会社・ダメな会社」の見分け方」とあるが、究極的には投資信託の勧め、のようにも思える。というと否定的に聞こえるが、中身は面白い。
 書名は「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」に迫るなかなかユニークな付け方である。

 著者は野村投信からゴールドマン・サックス等を経由してファンドマネージャーとして独立した方で、氏のサラリーマン時代からの投資候補会社めぐりを通じて得たノウハウを「スリッパの法則」としてまとめたもの。
 「スリッパの法則」とは以前に天声人語でも採り上げられたが、会社に入るのにスリッパに履き替えさせるような会社には投資をするな、というもので、もちろん食品や医者など特定の業種は除く。
「人の話を聞かない社長には投資しない」「社長室の豪華さとその会社の成長性は反比例する」「スリッパに履きかえる会社に投資しても儲からない」「極端に美人の受付嬢がいる会社には問題がある」「相談役のいる会社は成長性が少ない」
 その他にもユニークな法則も多く、それらはAMAZONの「なか見!検索」で目次を参照するとわかる。しかしこれらの法則も法則そのままでは誤解を生むものもあり、ホントウに知りたければやはり本文を読まないといけない。

 まあ、これらの法則を読みながら、取引先や知り合いの社長の顔を思い浮かべて楽しむのも、自社と比較して悲観するのもひとつの遊び方。一方、冒頭に記したとおり、投資信託の勧めと思えるのは、これだけの分析は個人ではできません、ということだ。投資信託は最近こそノーロードといわれる手数料なしのものも増えてきたが、標準的な手数料3%が不安定な収益に比べてどうにも高いと思われ、一度も試したことがない。この本をきっかけに久しぶりに見直しをしてみようか、という気にはなる。

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江上剛 大罪

江上剛 大罪
 江上剛 大罪を読んだ。今回のモデルは名前から見る限り三井住友銀行とゴールドマン・サックス(GS)。居座り続ける頭取は、彼が日本郵政株式会社の社長に内定したニュースに接した経団連会長の奥田トヨタ会長が「あんなダーティな奴」と吐き捨てた西川善文。そのダーティなパートナーとなるGSの担当は小説ではアメリカ人であるが、実際の日本支社長持田昌典氏は旧第一勧銀からのスピンアウト。
 小説のあらすじは銀行側のストーリーであるが、「うちの意向はアメリカ政府の意向」とうそぶくゴールドマン・サックスの凄みが底部にある。多数の女性事務職やアシスタントを含めた平均年収が6千万円を超える証券会社って・・・。こうした高額報酬で築いた個人資産をもとにユーザーを秘密倶楽部で接待攻勢にさらす。会社の金で接待をすれば贈賄にあたるものも個人資産を元だから犯罪ではなく単なる饗応で法的にクリアできる、というのが小説の話。ここで語られる政財界の大物をメンバーとする秘密倶楽部が実在するのかどうかはもちろんわからない。
 雑誌「選択」11月号では「世界のフィクサー ゴールドマン・サックス」の記事があるが、ウィークデーは自宅に帰らない社員の報酬は課長級で最高300万ドル、できるディーラーだと4000万ドルのボーナス・・・。95年に財務長官になったルービンはGSの元共同会長、今年6月に財務長官となったポールソンは前CEOである。選択ではポールソンのGS時代の中国との関係についても述べているが、あくまでもGSの姿勢はビジネスである。
 この記事ではフィクサーとして5つの要件をあげている。
第1にあくまでもビジネスに徹し政治的に中立なこと
第2は、うまい話に自分から擦り寄らない
第3は、なるべく敵をつくらない。敵対的買収を避ける。フジTVの買収事件で一時期有名になった「ホワイトナイト戦術」を考案したのはGS。
第4に、もっとも重要なのは強い立場の買い手におもねることなく、弱い立場の売り手とともに平等につきあい顔を立てること。この点が「泥棒貴族」といわれ利益を根こそぎ持っていったモルガンやロックフェラーにできなかったこと、と評価する。
そして最後の5つめとして軍需産業に手を出さない。これは第1とも関係する。
ということでGSは徹底的にビジネスに徹して正攻法でやっているという高めの評価であり、日本国内におけるハゲタカファンドのイメージとはかなり違う印象の記事であった。

 さて、この小説のモデルとなった三井住友とGSとの取引はビジネスのみだったのかそれ以外の部分もあったのか・・・、もちろん当事者しかわからない。

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