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塩野七生「ローマから日本が見える」

ローマから日本が見える
 塩野七生「ローマから日本が見える」を読んだ。
 世界史で受験に失敗して以来、司馬遼太郎が描く中国史の一部以外の世界史にはそっぽを向いていたが、たまたま図書館で塩野七生の本がずらっと並んでいるのを発見。塩野七生はけっこう面白いといううわさも聞いていたが、ずらりと並ぶ「ローマ人の物語」はいかにも大作、手に取るのも躊躇する。
 なにせ、30年近く昔のローマ史の記憶は、ロムルスとレムスの狼伝説の建国、カルタゴ・ポエニ戦争・ハンニバル(もちろんレクター博士ではないです・・・)、「賽は投げられた、ルビコンは渡れり」「ブルータス、お前もか」、アウグスツス、ネロ、五賢帝・・・・そんな単語がバラバラに思い浮かぶ程度。
とりわけローマ史については、古代ローマ人の方がよっぽど知性あふれるように思える現代のイタリア人、陽気な女好きのラテン民族、かっこイイけどいかにも壊れそうな車、というように、古代ローマと現代ローマ・イタリアとのイメージのギャップも手伝っていただろう。

 というわけで、居並ぶ著作のうちもっともとっつきやすそうな本書を借りてみた。

 建国伝説から2代皇帝・ティベリウスまでをダイジェストで描き、最後に皇帝や英雄達の通信簿がついている。
 とても面白い。
「ローマから日本が見える」との題名のとおりときおり挟まれる近代・現代の日本や世界との比較が面白くわかりやすい。皇帝という職位?の印象と現実とのギャップ、中国の皇帝との違いなど受験では勉強しなかったローマ史の面白さに触れられる。
 元老院と55年体制の自民党との比較などはもちろんであるが、もっとも印象に残ったのは、古代ローマはもっぱら財政負担軽減のために、公立病院と学校がなかった、という話。公共事業の基本のひとつである医療と教育にお金がかかるのは古今東西おなじ。古代ローマではこの2業種を民間に任せるかわりに医師と教育者には税制などを優遇し魅力ある職業に引き上げることにより、優秀な医師と教育を提供した。
 時代と環境に大きな違いがあるとはいえ、昨今の産婦人科など労働環境が厳しい医師の不足、公立小中学校の教師のレベル低下・・・、そんな現実が鏡のむこうに見える。

巻末の通信簿編のはじめに現代のイタリアの高校の歴史教科書の一文が掲げられている。
「指導者に求められる資質は、次の5つである。
知力。説得力。肉体上の忍耐力。自己制御の能力。持続する意志。
カエサルだけが、このすべてを持っていた」

 うう・・・。イタリア人ってホントは賢いのかも。

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