新妻喜永「北八ツ逍遥」「日本アルプス百峰」
新妻喜永と聞くと反射的に八ヶ岳を思い出す。それと渓流や新緑の写真のイメージがある。たぶん昔、八ヶ岳のアルパインガイド(今の山と渓谷社のアルペンガイド)や登山地図帳などで写真を見たことがあるのだろう。
「北八ツ逍遥」は山口耀久の「北八ツ彷徨」をイメージして作られた写文集である。もっとも新妻自身は「彷徨するには、いまの北八ツはひらけすぎてしまっている」「しかし、気ままにぶらぶら歩くこと(逍遥)なら、いまの北八ツでだってできる」と書いている。
北八ツと南八ツの境は夏沢峠ではなくて中山峠と主張する新妻がこの本で扱う地域は、南は天狗岳まで。遠景に南八ヶ岳が写りこむことはあるが、あくまで足元を見た気ままな写真集である。
「日本アルプス百峰」は表紙の写真イメージがいまいちでなんとなく貧相で小さめの写真集かと思っていたのだが、実際に手にしたら、かなり厚みのあるB5版の立派な装丁で少しびっくりした。貧相に思えたのは、1978年刊行のものなのでカラー色調の問題かもしれない。中古価格が300円~1000円くらいと安価すぎるのもひとつの要因・・・。1978年の定価2900円はけっこうな価格だと思うのだあが・・。
扉を飾るモルゲンロートの槍ヶ岳ほか冒頭に数カットがカラーだが、ほとんどはモノクロである。
「百峰」との署名のとおり南北中央アルプスの山を多数網羅している。メジャーでない山が1/4頁になっている箇所がいくつかあり、少し残念だが、それ以外はモノクロの味のある写真が満載されている。中古価格からは想像できない内容である。
後半は日本アルプスの概要や掲載した山112座の解説、コースガイド、高度表などがついており日本アルプス事典的なものとなっている。刊行された時代を考慮するとこのような構成もありなのだろうが、今の時代ではこのような情報は不要であろう。それよりも写真の解説をしてほしかった。
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