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船越好文「雪線」

船越好文「雪線」
 船越好文「雪線」を読んだ。ただし1998年に東京新聞社から刊行の復刻版。こちらの方が初版(1953年刊 白水社)。復刻版の方が安かったのと田淵行男「尾根路」と復刻版となる「尾根路II」との違いから、きっと復刻版の方が印刷が良いだろうと思ったから。
 副題に日本アルプス写真集とあるが、北アルプスを中心に南アルプスも聖岳、光岳まで網羅している。
 船越好文は1909年生まれで山岳写真家としては田淵よりも古く、「雪線」も本来は1945年刊行の予定であったが戦災で消失してしまったもの。名前を知ったのは実は最近で「山を愛する写真家たち―日本山岳写真の系譜」にて、である。


前穂高の東面
 この中に印象深い写真が1枚あった。
 右の写真(一部)「前穂高の東面」である。冬の晴れ間をのんびりと闊歩する二人の登山者が目を引く。人のいないことにこだわった田淵行男の写真を見慣れていると人がいるだけでおや、と思うが、この作品は戦中のもので、二人のうち一人はこの写真のあと学徒出陣でレイテで戦死してしまう。そこまでは上記「山を愛する~」で読んでいたが、「雪線」に付属していた「改訂版「雪線」復刊にあたって」によればこの作品のモデルであった中村徳郎のレイテでの手記は「きけわだつみのこえ」に収録されているとのこと。


左:雪煙を衝いて、右:帰路
 田淵の作品に比べて人が多い写真だな、というのが前半を眺めた印象であるが、比較のレベルの問題であって多くの作品には人がいない。縮小画像ではわからないが、現物を見るとその装備からかなり昔のものとわかる。左の作品は「雪煙を衝いて」と題され、剱岳をバックに突風の中を行く登山者が印象的である。人を写すと人に目が行くから人を入れないというのが田淵行男の考えであったが、船越は人に目を向けるために人を入れている。ちなみにこの4人の登山者のうちトップとラストの二人は日本初の8千メートル峰登山となったマナスルの隊員となる・・・、というような事情は作者のあとがきに書いてあったが、この写真が先の「前穂東面」とともに国立トリノ山岳博物館に永久保存をしている、というようなことは先の付録で知った。

復刊にあたっての目次

 ちなみにこんなメンバーが復刊にあたって寄稿している。

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