NHK「黒部 幻の大滝に挑む」
前回、NHKドラマ「氷壁」をコケにしたのでちょっと褒めておこう・・・。
昨日、「黒部 幻の大滝に挑む」の完全版(55分)の再放送を1年待ってやっと見ることができた。
昨年9月にダイジェスト版は録画したのだが、アナログで20分だった。まあこれもかなり迫力があったが、ハイビジョンの55分ものはさすがにかなり良い。ダイジェスト版では計画段階の話や突然の降雨撤退や「ぐだぐだ言わずに行くしかない」とぼやくシーンも途中で紹介される黒部のいくつかの滝の写真もなかった。ハイビジョンなので当然画面もきれい。一部の画像はハイビジョンカメラではない撮影も混じっていたが、秋の黒部の見事な紅葉やなんといっても渓谷美を遺憾なく表現していた。
しかし、志水哲也の「黒部物語」に収録されたこのロケの話を読むともう少し深いところまで楽しめる。
TVでは大きな荷物をかついで水平歩道を歩く志水とスタッフの姿が冒頭に写る。あの道をあんな荷物を背負って歩くだけでも足が震えるが、総重量500キロの荷物を十字峡まで運ぶために彼らは4日間かけて何回も往復している。
I滝(黒部の大滝のうち一番下段の落差48mの大滝)の下に着いたディレクターが「こんな場所だとわかっていたら提案なんてしなかった」とつぶやく・・・。ここは十字峡から剣沢を溯って行った場所ではあるが、まだまだ入り口。目指す幻の滝はここからが大変だ。
雨の日でも必ず焚き火で飯をたくこだわりのスタッフ・・。いつでも大盛りで大学生のように飯を食うスタッフ。割当以上のおかずをつい食べてしまい食事当番に監視される志水。そんな中で単独行ばかりだった志水が大学山岳部の団結力や仲間意識を感じていく。
突然の雨による撤退もTVで見ると焚き火のテラスでのように見えるが実はチロリアンブリッジで岸壁を横断した緑の台地でのことだったようだ。あとは懸垂下降で奥の滝までわずかなところであるが、ここから結局I滝のベースキャンプまで撤退している。
再度のアタックで見事に奥の滝(D滝)へたどりつくが、最後の下りで、下ったら最期、もう戻れなくなるような空恐ろしい感じを志水は味わう。降り立った滝つぼから見上げる瀑水にはときおり崩壊した巨大な雪塊が混じる。あれを食らったらおしまい、やはり立ち入ってはいけない領域に来てしまったのか、と思いながらも満ち足りた気持ちでいっぱいになる。
TVでは「生きて戻れるか心配」と笑いながらつぶやいていたが、あの一言にはこんなウラがあるのだ。・・というような話はTVでは表現できないよなあ、と思いながら、「黒部物語」の見事な黒部大滝の写真を久しぶりに眺めてみた。
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