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田淵行男「安曇野挽歌」

安曇野挽歌
 田淵行男「安曇野挽歌」を読んだ。前作、「安曇野」から6年後の1982年の刊行。
 自然に関わる書物で「挽歌」と名の付くものにあまりいい印象はない。時代がたてば自然は発達するよりは壊されるのが世の流れ、それを「挽歌」と嘆くだけでは読むものには無力感が残るだけ、というものが多い。そういう意味でちょっと危惧があったが、そういう印象はあまり感じられなかった。前作「安曇野」で収録できなかった白馬山麓が前半の大きなテーマとなっていることと、巻末の読み物以外の本文はつとめて押さえた書き方になっているせいだろう。

安曇野挽歌
安曇野挽歌


 前半は白馬山麓。白馬の山の写真といえば白馬三山しかないし、その姿は八方スキー場からのちょっと右下がりの三山など定番しかない。対象の山はその定番なのだが、これほど印象が異なる写真がよくも撮れるものだ。白馬本峰をはずした2山の表情の方がいいかもしれない。もっとも白馬山麓といいながらも佐野坂より南からのものもわずかに収録される。
 後半は安曇野博物誌という印象。田淵の本はどこでも蝶が登場するが、この本では蝶もさることながらその他の昆虫や植物がふんだんに登場する。とはいえそれらもすべては「挽歌」であり、過去の記録が多い。
 巻末の読み物は壊された安曇野の自然ゆえに自宅の庭が過去の安曇野を再現しているために庭の自然の解説がかなりの部分を占める。田淵家の庭は自然放任主義でアメリカシロヒトリとマツケムシ以外は生存を保障され、植物もあまり手を入れられない。さながら土御門の安倍清明邸のようだ。

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