東山魁夷「信州讃歌」
(承前)
というわけで、「東山魁夷の道」を読み終えたので「信州讃歌」を読んだ。
こちらは風景画家として多くの素材を求めることになった山国・信州に関わるエッセイである。美術学校の時に初めて訪れた木曽の紀行文がいかにも若々しい。
本の大きさはB5のやや横幅が大きい変形版であり、絵は上の写真のとおり片側のページのみの印刷なので迫力はないが、帝展初入選の「山国の秋(試作:原作は戦災で美術館ごと消失)」をはじめ信州に関わる54の作品と5つのスケッチが掲載されている。「山国の秋」は一見して八ヶ岳の南麓とわかる山が大きい。でも三つ頭の左奥に見えるはずの権現岳は描かれていないけど。
「光昏」(こうこん)の誕生経緯についての貴重なエッセイもある。よく知られるようにこの作品は野尻湖からの黒姫山なのであるが、前景の樹木は箱根の姥子温泉なのであった。ちなみに原画を描いたホテルがある野尻湖の東からカシミールで黒姫山を描いてみるとけっこう絵と同じなのに今更ながらびっくりした。
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