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読了「ある偃松の独白」

中村清太郎 ある偃松の独白ある偃松の独白 目次

 中村清太郎「ある偃松の独白」をやっと全部読んだ。購入当初は表題作と高山蝶と雪形の3篇しか読んでいなかった。
 前作「山岳渇仰」では登山家・中村清太郎としての作品がメインであったが、この本では、画家・中村清太郎としての作品が多いと感じる。
 「春雪写山行」「山の絵の伝統」は題名でわかるが、「黒部川峡谷の話」「七面山冬ごもり」は絵のために山に籠もった記録である。いずれの作も時代を反映しており、興味深いが「黒部川峡谷の話」は湯治場としての釣鐘温泉の人との交わりが豊かに描かれていて、山の話としては珍しい部類に入る。
 中村が歩いた時代なので当然といえば当然ではあるが、発見、探検の部類が多いので、文章はゆったりしていても、なかなか面白い。
 「北アルプスの秘境」は小池新道を作っていた小池さんが発見した鏡平の池まで道なき道を行く話である。中村はこの場所に「清見ガ原」、池には「穂影の池」と命名しており、穂高を湖面に映す有名なカットが添えられている。鏡平もなかなか良い名前ではあるが、「穂影の池」はいかにも画家中村らしい命名である。
 「山雪の幻像」は雪形をめぐる話である。白馬岳の名前が「代掻き馬」に由来することは当時でもよく知られていたが、その場所をはっきりと示す資料はなく、奔走のうえにそれを確認し、新聞記事を通じて世に広めたのも中村清太郎である。明治期から山を歩き、国内初の後立山縦走で二種の高山蝶を発見した中村が、昭和29年になってやっと代掻き馬の雪形を認知したことは意外にも遅い、という印象がある。しかも中村が雪形に注目しだした頃はすでに農業技術の進歩により雪形そのものが農民から忘れられてきた頃なのである。かくいうぼくも代掻き馬を最初に聞き知った頃は小蓮華岳の子馬の方だと思っていたが・・・。
 少し残念なのが「黒部川初遡行の記憶」。これは木暮理太郎と共に歩いたときの記憶(記録ではなく)であるが、木暮理太郎が「山の憶ひ出」に詳細に記録を書いてしまったので片割れの中村の方は単なる記憶で終わってしまった。「山の憶ひ出」も復刻版も平凡社版もあるが大部なのでまだここは読んでいない。

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Tracked on 2007.10.11 at 23:21

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