田淵行男「私の山岳写真」
函もカバーもない安価なものをゲットできたので、田淵行男「私の山岳写真」を読んだ。
遺作である「山は魔術師 私の山岳写真」は大型本であるが、こちらは写真のとおりの小型の本である。あとがきには「気軽にザックに入れてもらい山へお伴できれば幸いである」と結ばれている。
「山は魔術師」は亡くなった田淵さんのあとを水越武が継いで構成等を担当した、豪華写真集+田淵の写真技術論であるが、こちらは山の素材ごとに田淵が語る写真術である。
昭和39年刊行の小型本であるが、いちおう紙質は光沢がある上質紙で、下の写真のとおり見開きでの写真もときどきあり、また多くのページは写真と文の構成となっているのでミニ写真集としても楽しめる。
中身は下の目次写真のとおり、最初に山岳写真に関するエッセイがいくつか並び、そのあとに本編、最後は撮影ガイドとなる。撮影ガイドの書き方は「山岳写真傑作集」を彷彿とさせる。
実はあまり期待しなかったのだけれど、けっこう良かった。
最近のカメラは自動化が進み~と書かれたのはようやく35ミリ版が普及し始めた頃であるが、デジカメ全盛の現代でもまったく褪せることがない。
「山の魔術師」はこの「私の山岳写真」の続編として書かれているが、この2冊の間に実に31年という年月があることを感じさせないのはすごい。これだけ変節しない人も珍しい。ある意味非常に頑固なのだと思うが、でなければこれだけの作品は撮れないのだろう。
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