川崎精雄「雪山・藪山」
川崎精雄「雪山・藪山」をやっと読み終わった。
「雪山・藪山」というなかなかの題名も川崎精雄の名前が付くとやわらかい印象がある。同じ川崎さん(と、先ごろ逝去した望月達夫氏編)の「静かなる山」など低山徘徊のシリーズを彷彿とさせるからである。これが同じ題名でも著者が志水哲也あたりになると厳しい冬山と日高あたりの深山を突破する冒険譚に思えてくるだろう。
とはいえこの本の記された山行が低山徘徊かというとそうではない。
美文かというよりは淡々としたエッセイスト(氏の本業が銀行員だったせいか?)でもある川崎さんが綴る記録は、1929年から戦前あるいは60年代までを中心とした、主として会津など南東北を中心としたスキー登山や藪山行で、当時の装備を思い浮かべながら読むと、なかなかの厳しい山行ばかりである。
「この山の魅力は道がないことだ」という意味の言葉が何度も出てくる。
宮下啓三氏が解説で「中高年の登山者に川崎さんのこの山岳紀行と随想と俳句を集めた自選の作品集を玩味していただきたいと思う」と昨今の中高年登山ブームに警告を発しているが、他山の石としたいところである。
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