田淵行男「尾根路II」
田淵行男「尾根路II」は1980年の刊行で、当時でも定価25,000円もした。1958年に朋文堂山岳文庫として刊行された「尾根路」の復刊である。復刊といっても全く同じではなく一部差し替えがある。あとがきによれば、カラー10点を追加、モノクロ8点を差し替えおりページ数も22ページ多い、とのこと。もっともオリジナルは未見である。
この本は幅26センチ、縦31センチのやや横長の大判の本である。
そのせいで、写真の横にコメントが添えられているにもかかわらず、写真の大きさも良い。作品は上述のとおり復刊であるため一部を除きほとんどが1957年以前のもので、一部は「傑作集」に掲載済のものもある。
しかし、「わが山旅」は印刷が思わしくなく、「傑作集」はアサヒカメラの臨時増刊なので紙質と体裁に不満があった、と田淵はあとがきに書く。3度目の正直の写真集が「尾根路」にあたる。そういった復刊事情のため写真もコメントも記憶にあるものが目立つが、まさに紙質と印刷、そしてこの写真の大きさが意味があるだろう。
ただいまだにネットでこの本が出ているのを見たことがない。58年のオリジナル(定価2,000円)が中古価格でも2万円近いので、定価25,000円の「II」の相場はちょっと考えたくない。(追伸:25,000円は通常版の価格、翌年刊行になった普及改訂版はわずかにサイズが小さくなったが6,800円だった。)
Recent Comments