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田淵行男 「山の紋章 雪形」

山の紋章 雪形 田淵行男
 先日、ナチュラリスト・田淵行男の世界を読み、田淵の写真集を見たくなった。しかし、田淵の本はいずれも中古でも高価なのでどうしようかと思っていたら、「山の紋章 雪形」が図書館においてあった。
 田淵行男が雪形についての本を書いたことは以前から知っていた。雪形についても白馬岳の「代かき馬」や五龍岳の「武田菱」や爺ヶ岳の「種まき爺さん」中央アルプスの「島田娘」くらいは知っていたが、その知識もヤマケイあたりの特集記事で仕入れたものだったろう。読んだのはおそらく70年代後半だから読んだ記事も田淵のものだったかもしれない。雪形には多少の興味があるものの、田淵についての知識も興味も以前はなかったので、田淵の本をわざわざ読んでみようという気にならなかったが、今回は渡りに舟と重い大型本を抱えて、いそいそと帰宅した。

 借りたときは、おおかた2,3時間で眺められる写真集という認識だったのだが、いざ読み始めると、ぱらぱらとめくればすぐに最後のページにたどり着けるような単なる風景写真集ではなかった。たっぷり2週間かけて読む羽目になり、嬉しい誤算だった。

 この本はもともと博物学者である田淵らしいこだわりが凝縮された逸品といえる。他の人ではなかなかここまでまとめることはできなかっただろう。
 もちろん雪形の写真は豊富なので、たしかに写真集ではあるが、寄稿をはじめ田淵自身によるいくつかの記事がとても興味深く、その量も写真集の巻末に付録的に掲載されたというレベルではなく、大型本からは想像できない小さいフォントでぎっしりと収録されている。
 まさに雪形の集大成といえる。しかし30年にわたって雪形と係わった田淵をしても、写真の出来栄えはもちろん、雪形そのものが確認できないものも多数あるという。


 目次や内容・特別寄稿の執筆者などはこちらに詳しいのでリンクさせていただいた。
 借りた本には外函はないのでわからなかったが、リンク先の写真では函には田淵が発見した「雪形ニューフェース」の自信作「中岳の舞姫」の写真で飾られている。ちなみに中岳は北アルプスの槍ヶ岳の南の山である。

 ぜひとも手元に置きたい本であるが、残念ながら田淵の著作の中でも高山蝶関係と並んで一際高値であり、10万円以下ではまず入手できないので当分諦めることにした。

信州 雪形ウォッチング
新府城跡から見た鳳凰山頂付近の農牛

 代わりに、といっては著者に失礼ではあるが、たぶん現在入手できる唯一の雪形本である、近田 信敬「信州 雪形ウォッチング」を入手した。
 こちらはA5版128ページの小冊子で、北・中央アルプスの有名な雪形を写真と簡単な説明でガイドし、見るためのポイントも記載した観光ガイドに近いものだ。ちなみに、山なみの説明はカシミール3Dで作成した鳥瞰図に山名や雪形の現れる場所を記載しており見やすい。どうせなら南アルプスも範囲にいれてくれると、ぼくが撮影した唯一の雪形である鳳凰の農牛も収録されたのだろうけど。

 さて、「山の紋章 雪形」の「雪形流転」という文章で雪形が永久不滅ではなく、開発や地盤の崩壊、雪崩などにより年月とともに形が変り消滅するものもあれば新たに誕生するものもある、と田淵は書く。
 代表的なものだけでもいいので、実物を早めに眺めておきたい。そのためには「信州 雪形ウォッチング」は、かなり役立ちそうである。

大天井付近からの中岳・舞姫P.S 頭が欠けてるけど舞姫の写真もあったので追加しました。93年のものです
 きれいに写っているものはこちら

田淵行男関連著作一覧


2006/5/5追記
雪形の写真を少しだけまとめました。こちら

2006/11/12追記 念願の「雪形」を入手したので写真を中心に追加してみた。


外箱は中岳の「舞姫」

表紙は白馬岳の代掻き馬

裏表紙は木曽駒ヶ岳の駒

見開きは五龍岳の武田菱

自序 雪形開眼

雪形の一覧

最初はやはり常念坊

雪形変化 種まき爺さんの一部

舞姫の解説には熱が入る

磐梯山の雪形について

福島・宮城・山形の雪形

室谷洋司氏の津軽雪形行脚

雪形についての田淵の新聞寄稿

女子高生のレポートもある


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» 中村清太郎「ある偃松の独白」 [Fool Proof]
ナチュラリスト・田淵行男の世界の巻頭で山岳写真研究家の杉本誠が田淵の業績を解説する長文を寄稿している。その中で中村清太郎が高山蝶2種の発見者であり、発見時の様子を田淵の「高山蝶」に寄稿したこと、雪形... [Read More]

Tracked on 2006.01.28 at 02:38

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