内側から見た富士通「成果主義」の崩壊
「内側から見た富士通「成果主義」の崩壊」を読んだ。
富士通の「成果主義」が失敗したのは有名な話だし、秋草社長(当時)が赤字の理由を「従業員が働かないせいだ」と言い放ったことは、ビジネス雑誌とは縁遠いぼくでも知っている。
富士通・元富士通の知人も公私に渡りそこそこいるし、それなりに愚痴や世間話は聞いている。
そういうわけで、少し前に本屋を見たらなぜか山積になっていたが、購入してまで読もうという気にはならなかったが、購入しないで読めたので読んでみた。
まずは光文社ペーパーバックスの独善的な英語交じり表記が読みにくい。最初は著者の意向かと思ったがそうではなかった。たまには「ああ、英語だとこう言うのね」と思うことはあるが、ほとんどは邪魔。途中から無視したら、通常の速度で読めるようになった。
しかしどのフレーズを英語にするのか、その表現が英語として正しいニュアンスなのかまで著者はチェックしているんだろうか?
さて、人事にいたということで一般社員よりもそれなりに詳しい実態が報告できている点は「読み物」としては面白い。
が、質的には「2ちゃんねる」に毛が生えたレベル、というといい過ぎなら、「はみだし銀行マンの勤番日記」横田濱夫と質的には同じくらいだろう。自分の通常業務で把握できたレベルでの報告しかなく、その原因を探ることもない。
著者は「上司の目標や評価をオープンにすべき」とか「降格がないのはおかしい」といっているがが果たしてそうだろうか。現場の上司の目標は職場の目標とリンクしているはずであり、各レイヤーで詳細に公開することがいいこととは思わない。上司の個別の業務目標は部下には理解できないことや理解させたくないこともあるから。
「降格がないのはおかしい」というのは「資格と報酬」を分離する成果主義の基本的な考え方と矛盾している。これが「減給がないのはおかしい」というならわかるが。
最後の方に人事部は社内エリートでそれこそが諸悪の根源のような理論が展開するが、この作者レベルでエリートの仲間入りできるのであればそもそも人材難なのかもしれない。
P.S この本、著者の履歴が一切記載されていない(見落としかも)。「成果主義」が施行されてからの入社、途中から人事部にいた、富士通を辞めたことは読めばわかるが。それ以外の履歴は書きようがないのか書きたくないのか、何もないのか。
こういう内部告発的なものでしかも(作者としては)まじめに取り組もうとしている本であれば書く側の職業的あるいは思想的な背景を知りたい。途中に出てくる幼稚なロジックを見るたびに、「うう、この人何歳なんだろうなあ。成果主義以降の入社だから94年以降の入社か、じゃあ30代前半かなあ」などと勝手に「大人度」を想定することしばし・・・。
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